日専連 全国児童版画コンクール

ごあいさつ

 このコンクールは、平成の産声とともにスタートし、全国の日専連の仲間を介して多くの小学生の皆さんに出品を呼びかけ、日本は言うに及ばず世界的な規模に大きく育ってまいりました。
 今や、北は北海道から南は沖縄まで多くの作品が地区の審査を経て寄せられ、文部科学大臣賞を筆頭に各賞に選ばれております。入選された皆様には、心よりお祝い申し上げます。
 ここまで成長してこれましたことは、文部科学省は元より、全国の都道府県の教育委員会、そして全国の小学校とその指導を担っていただいた皆様のお陰と存じます。心より感謝申し上げます。
 これからも、児童の皆さんの芸術への入口を開くお手伝いを全国の専門店の同志たちが心を込めて取り組んでまいります。どうぞ、皆様の街の小さな専門店に温かいご支援をお願いいたします。

日本専門店会連盟 理事長

大西 賢治

選評(版画の素晴らしさ)

 今年も全国から多くの素晴らしい作品が寄せられました。「日専連全国児童版画コンクール」も四半世紀が過ぎました。
参加されている日専連関係者の方々、ならびに学校の授業から図工の時間が短縮される中でご指導いただいている先生方の協力があって成り立っています。本当に感謝しています。
 美術は成長のための情操教育の一番大切なところを担っています。その一つである木版画の表現は世界で類を見ない表現方法です。日本の伝統である浮世絵木版画は世界で最も高い評価を得ています。
 作品はスケッチをして、写し彫って摺るという工程は他に類を見ない表現方法です。
 特に水性で摺る事は本当にめずらしい事です。この機会に一般の方々もぜひご覧になってほしいと思います。
 日専連の全国児童版画コンクールは地域の行事等を子供たちの目線でとらえて表現しています。個性豊かに伸び伸びした作品がたくさん出品されています。
また、新しい年に向って力作を待っています。

日本美術家連盟 前理事長
日本版画協会 前理事長
多摩美術大学 名誉教授

吹田 文明

木版画のすすめ

 今年も、特に沖縄県の島々の小さな学校からの応募など全国から沢山の作品が送られてきました。ありがとうございました。
 長年の審査経験から1、2、3年生で多く見られる紙版画について、授業の状況や先生方の方針、児童の力量等から早急にという訳にはいきませんが、ぜひ木版画へ挑戦してください。
 紙版画では、個性や強弱が現れづらく1年生の作品と3年生の作品とで遜色ない場合が多いです。紙を切って貼るだけよりも、彫刻刀で版を彫ることで違ってきます。
 「彫刻刀の前に手を絶対に置かない」ことを徹底すれば手を切るなどの怪我はほとんどなくなり、ある例では未就学児でも板は無傷でなくとも怪我をせずに木版画を仕上げました。
 次回以降、3年生のみなさんにはぜひ木版画にチャレンジいただき、もっと強く個性を溢れ出してください。

船坂 芳助

個別作品選評

 選考中気になったのは中・高学年での紙版での出品がありましたが、低学年の紙版と同じ様な表現にとどまり、マイナス面でしかありません。高学年での紙版でしたら、低学年では決して出来ない、細密な表現力を見せるなど、工夫がほしいです。また低学年では手描きでしかないような作品もありました。ステンシル、スタンピングでも良いです。版を通して表現する「間接表現」としての版画を理解していただき、版表現の楽しさ・おもしろさをつたえる作品を出品していただきたいと思います。
 中学年は三年生の木版画の作品が増えました。道具の扱い方を含め指導に苦労があると思いますが、低学年からの移行期として今後も楽しみな学年です。
 文部科学大臣賞の照井塔子さんの「最後の運動会」は、木版画の基本技法をしっかりと巧みに、受賞式の場面をしっかり彫り込み、木版画の魅力を画面一杯に画した作品優勝を視してのバック音楽が聞こえてくるようです。すばらしい作品です。
 日専連理事長賞の塚林ことねさんの「タヌキの花よめ」はタヌキの愛らしい表情があたたかく、小さな花飾りがアクセントに、紙版でありながら階調表現が画面の雰囲気を豊かに仕上げて最高の出来です。
 日本版画協会賞の天野凱晴さんの「宝石に話しかけるオンドリ」は、ドライポイントで制作された作品で、多くの出品の中で数少ない作品表現です。オンドリが宝石に話しかける様子が紙版と木版と違ったニードルを持って画くように引っかいて画いた線がタッチとして画面に魅力をもたせます。オンドリの羽根のフサフサ感が感じられる秀作です。
 青年会長賞の田伏悠さんの「無理も時には必要」はリレー競走中か青いハチマキをして前をキッと見すえて、力強くいきづかいが聞こえてくる力作品です。
 特別学校賞の富岡小学校6年一同の「富岡城と伝統のペーロン大会と富小の先生たち」は先生達がワンチームとなってペーロン競漕、迫力満点画面一杯に仲の良さが感じられる素敵な作品です。

中山 隆右