機関誌『専門店』ハイライト

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店人いま260

オーナーは元気ハツラツ!
お店は癒しの場で お客さまには夢を売る

misehitohita 1.JPG石松美佐子氏 ブティック アディーニ(日専連ヒタックス)

聞き手 連盟 宇田 弘

大分県日田市は、江戸時代に天領として九州の政治・経済・文化の中心地として栄華を誇った。大名に金貸しを行う豪商もいたという。今も歴史ある古い町並みが残り、小京都といわれるように伝統と重厚な文化の香りが漂い、毎年多くの観光客が訪れる。
福岡空港からバスで1時間半。四方を山に囲まれた盆地であるため、冬は雪が積もることもあるという。日田の中心街は各地の中心市街地とは異なり、中央大資本の商業施設(チェーン店)は比較的少なく、独自の文化が残されている。
今回取材したお店は、日田の中心街にあるブティック。オーナーの石松美佐子さんは、明るく元気な方で、お年はいえないが10歳以上は若く見えるステキな方だ。お客さまには無理に売ろうとはせず、"バーゲン"の赤い紙が大嫌いで、安売りは一切しない。店は癒しの場で、お客さまには夢を売るといい、午後にはよくお客さまがコーヒーを飲みに来ると言う。
インタビューが終わって店の写真を撮っていると、さっそく常連さんがコーヒーを飲みにいらっしゃった。

思いやりを大事に

●創業はいつになるのですか。
石松
 25年がたちます。

●創業者は。
石松
 私が創業者です。

●ブティックを経営するキッカケは?
石松
 初めは地元の洋服屋さんで8年間働いていました。その店でお世話になったオーナーに、「あなたは、この店の経営者になったつもりで働きなさい」と教わりました。その後、そのお店を出て、共同経営でブティックのお店を10年間やりました。そこでいろいろ勉強したことが、今に生かされています。そして独り立ちをして今に至っています。

●ずっと日田でご商売をされてきたのですか。
石松
 日田から出ようとは思いませんでした。東京も好きなのでよく行きますが、東京で商売をしようとは思いませんね。田舎は人付き合いが密接でいろいろありますが、日田が好きなんでしょうね。
うちは固定客が多いので、常連さんには創業当初からお誕生日には必ずお花を届けています。ほかのところで浮気されないようにね(笑)。

●共同経営では、人付き合いの面など、いろいろと勉強になったのでは。
石松
 辛いこともありましたね。意見の違いはやっぱりありますし、その時はどちらかが折れなければならないですからね。でも、お客さまには恵まれました。初めに勤めていたお店から、ごひいきにしていただいている方もいます。その方は80歳を過ぎていますがお元気ですよ。

misehitohita 2.JPG●当たり前のことですが、お客さまを大事にされているのですね。
石松 
人に対しての思いやりを大事にしています。洋服は、どこでも売っていますので、お客さまとは心で接するように心がけています。私は、すぐにお洋服を売りません。このテーブルでコーヒーをお出しして、よくおしゃべりをします。そうしているうちに、お客さまが店内を見て「これいいわね!」と、お買い上げいただくことが多いんです(笑)。

misehitohita 3.JPG●お客さまの層は、どういう感じですか。
石松
 30歳代から上は80歳代まで幅広いです。親子でいらっしゃる方もおります。

●店内は明るくキレイですね。
misehitohita 4.JPG石松
 私は絵やお花が大好きなんです。ここにあるお花はお客さまからいただきました。ここは洋服を売るところですから、清潔にしていないとね。ただ洋服を並べているお店もありますが、私は何か癒しが欲しいんです。店は癒しの場だと思っています。ここに飾ってあるのは、女優の吉永小百合さんの色紙です。私の懇意にしているデザイナーさんと吉永小百合さんが友達で、それでいただきました。

●店内にはステキなBGMが流れていますがピアノもあるんですね。
石松 BGMは私の好きな音楽を流しています。今流れているのは「題名のない音楽会」です。ピアノは私も好きで、ここにあるのは自動ピアノです。なんといってもここは"癒しの場"ですからね(笑)。

試練に感謝

●店名の「アディーニ」の由来を教えていただけますか。
石松
 フランスの詩の本に出てくる可愛らしい女性の名前「アディーニ」を店名にしました。

misehitohita 5.JPG●店内にも飾られていますが、詩がお好きなのですね。
石松
 前島ひで子さんという方の詩や絵を飾っています。スピリチュアルアドバイザーでもあり、企業、学校で講演を行っていて、私の大好きな方です。前島さんは「景気は悪いですが、それを人のせいにせず、試練ととらえ、感謝をしなさい」と言います。

●試練を受けて、強くなりなさいということですね。
石松
 そうです。そう考えると楽になれます。また、「拭く、掃く、磨く」をしなさいとも言います。当たり前のことなんですが、できていない人が多いのです。
世の中はお金が一番ではありません。あの世にお金は持っていけませんからね(笑)。『徳』を積むことが大事なんです。

●「徳を積む」とは良い言葉ですね。人のために何かを行うということは、なかなかできませんけどステキなことですよね。
misehitohita 6.JPG石松
 最高の満足でしょうね。そんな人生を送りたいですね。見返りを求めるわけではないですが、徳を積めば、めぐりめぐって自分に返ってきます。商売でも「売ろう、売ろう」ではだめですね。
あるとき、よく行く大阪にあるアルマーニのショップで、店員さんが私のところにいきなりやってきて「これ、お似合いですよ!」と一方的にすすめてきたんです。ビックリしましたね。私はそういうのが大嫌いなので、すぐに引いてしまい、店を出てしまいました。自分がされて嫌なことは、お客さまにはしません。

misehitohita 7.JPG●謙虚なのですね。
石松
 そんなことはありません(笑)。

赤い紙が大嫌い

●お店の話に戻りますが、店の作りやディスプレイは誰かに教わったり、参考にされたお店などあるのですか。
石松
 自分のやり方、考えで好きなように行っています。

misehitohita 8.JPG●服の仕入れはご自身でなさっているのですか。
石松
 仕入れは私が行っています。私の好みで仕入れることもありますが、お客さまの顔を思い浮かべて仕入れることが多いですね。でも、「似合うわよ。あなたのために仕入れてきたのよ」と、しつこく売りつけるようなことは絶対にしません。

●服はどこで仕入れられているのですか。
石松
 東京や大阪ですね。今はもう、来年の夏物を仕入れているんですよ。

●冬が来ていないのに、もう夏の仕入れですか。来年の夏は、猛暑か冷夏なの分からないですよね。
石松
 まあ、そこが難しいところですけど、長年培ってきた勘で行っています。また、それなりの売り方もあります。あと、私はお客さまには元気で若々しくいてほしいという思いで仕入れをしています。

●多く仕入れすぎて残ってしまったら、セールなどで処分されるのですか。
石松
 それがあまり売れ残らないんです。それからうちは、バーゲンというものを一切しません。"バーゲン"や"セール"などの赤い紙をべたべた貼るのが大嫌いなんです(笑)。でも、お得意さまには時々サービスをしたりします。

●なるほど。店の格を落としてしまいますよね。それと、仕入れがお上手なんですね(笑)。
石松
 でももしも売れ残ったら、年末のお年玉としてくじ引きで差し上げてしまいます。私は、バーゲンはお客さまを裏切ることだと思っています。安くできるのであれば、最初からそうすればいいんです。また、あまりモノを売りつけることも失礼です。

ユニクロにも行きます

●定休日はあるのですか。
石松
 水曜日がお休みにしていますが、休まないことのほうが多いですね。

●単価的にはどれくらいでしょうか。
石松
 1万円から10万円くらいでしょうか。うちは、単価的に安い商品は売れないんです。安いものをお求めの方はユニクロやしまむらさんに行けば買えます。うちは、安さで勝負できませんから。安売りで勝負したら大資本にはかないませんからね。うちではデザインや生地、裁断にこだわり、品質的に良いものをお客さまに着ていただきたいのです。安いお洋服はそれなりですが、うちの商品は型崩れせず何年も持ちますから、そう考えますと、決して高い買い物ではないと思いますよ。

でも間違えないでください。安物はダメだと言っているのではありません。私も部屋着などはユニクロで買って着ています。高い洋服ばかり買っていては、お金がいくらあっても足りませんからね(笑)。お客さまの生活のスタイルに合せて、買い求めれば良いのです。

misehitohita 9.JPG●街で人と同じ洋服と出会うのは、特に女性の方はいやなものですよね。それと、最近は東京などでも個性的な個人店のブティックが少なくなり、全国的なチェーン店ばかりになってしまいました。どこのお店も同じような無難なデザインばかりで楽しくありません。アディーニさんのような個性的なお店にもっと頑張ってほしいですね。
石松
 そうなんです。デザインが無難な安売りの店が増えましたね。服だけでなく、魚屋さん、八百屋さん、豆腐屋さんも消えていっています。安売りのスーパーや郊外の大型店にシェアを奪われてしまいました。その結果、街を歩いても楽しくなくなってしまいました。

●そうですね、地域に即した街並みを形成していた中心市街地という文化が壊されました。もう遅いですが、緑豊かで景観の良い田園の中に、突如として大型店が出店した結果はどうでしょうか。メリットとデメリットを考えればその必要性は明らかではないでしょうか。
石松
 日田は天領の地として栄え、豪商が多く、大名に融資する金貸しも多くいました。また、伝統ある旅館や老舗も多くあり、小京都と呼ばれて観光客もたくさん訪れています。しかし、郊外の大型店の影響で、中心地の集客力のあった百貨店の岩田屋さんが撤退したことなどにより、街に活気がなくなってきてしまいました。
日田の市長さんは私の親友で、ここによくコーヒーを飲みにこられます。その市長さんは欲がなく、本当に日田をどうにか良くしたいという強い気持ちをもっています。民間出身の方ですが、こういう方に頑張ってほしいと思いますね。

笑う門には福来る

●オーナーは元気ハツラツですね(笑)。
石松
 私は景気が悪くなっても人のせいにはしたくありません。先ほども申し上げましたが、試練として受けとめています。私たち商売人はお客さまに夢を売ることが仕事ですから、景気が悪いと下を向くよりも、前を向いて元気にいたいですね。くよくよしても仕方がないですからね(笑)。

●開き直ることも大事なのですね。
石松
 大事なことです。努力することで解決できるのなら別ですが、考えてもどうしようもないことに取り付かれていてはダメですね。また人は、人と人のつながりの中で生かされています。ですから、そこを大事にしていきたいですね。同じ人生なら楽しく笑って過ごしたいですからね。
「笑う門には福来る」って言うじゃないですか(笑)。

●ご商売のことよりも、人間的なお話のほうが多いというか、楽しいというか、勉強になりました。
石松
 先ほど申し上げたとおり、「売ろう、売ろう」ではダメです。午後になるとおそらくお客さまがお茶を飲みにいらっしゃいます。私は「来てね!」などという電話はしません。案内状も多く出しません。でも出すときは手書きで、"料金別納"やパソコンはなく、手書きで切手を貼って、心をこめてお出しします。

●前向きで、心配りがいいですね。これからも、元気にご商売され、たくさん夢を売っていってください。