機関誌『専門店』ハイライト

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店人いま 255

お客さまとの対話を重視し、個性的な服をセレクトして この時代に右肩上がりの成長

sendai 1.JPG鎌田洋子 氏 (株)ビーシック(仙台会)

小さいころから洋服が大好きで、ファッション雑誌に夢中になり、平成元年にレディースファッションのお店を開業。現在、仙台市内に5店舗を構える。そして驚くことに、モノが売れないこの時代に、全店舗が毎年売上げを更新しているという。また、安売りには走らず、「価格ではなく、価値で勝負しています」と、鎌田洋子社長は言う。
昨今、街なかに個性的な服を扱う小さくて可愛らしいお店がなくなってきて、個性的な服を探し求めて来店されるお客さまも多いと言う。店内には、15ブランドの中からセレクトされた個性ある洋服がステキにディスプレイされている。お客さまの8割がリピーターで、お客さまがお客さまを連れて来られて、お店の中でお客さま同士が仲良くなることもあるという。

カー用品からファッションへ


sendai 2.JPG●創業はいつですか。
鎌田
 平成元年9月ですので、今年で23年になります。

●その前は何をなさっていたのですか。
鎌田
 この業界とはまったく関係のない、カー用品を16年間販売していました。

●そちらもご自身で創業されたのですか。
鎌田
 創業者の1人として働かせていただきました。

●前の業種でカー用品ということでしたが、車もお好きだったのですか。
鎌田
 そうですね。

●好きなことがご商売になっているのですね。
鎌田
 好きが高じてという感じですね。

●カー用品のお店をやられていたときから、いつかはファッションをと考えていたのですか。
鎌田
 そうですね。ベースにはあったかもしれないですね。洋服が大好きで、小さいころからファッション雑誌などを見ていました。また、和裁や洋裁の専門学校にも行って習っていました。そしていつも人と違った服を探していましたね。それにカー用品とファッションは、業種は違いますが、お客さまの喜んでいらっしゃるお顔を見るのはうれしいものですからね。
sendai 3.JPGこの間も、杖をついたお客さまが来られて「最近、足が弱っちゃって...」とおっしゃっていたのに、お気に入りのお洋服を見つけられたら急にお元気になられて、杖はその辺に置きっぱなしで、洋服をご覧になられている姿などを見ると、ステキな商売だなと思いますね。
最近は「孫の習いごとの発表会を見に行くので、着ていくお洋服を選んでくれない?」とおっしゃる方が増えています。子育ても終わり、家のローンも終わり、さらにご主人さまもお見送り(亡くなり)して、「これからは私の人生よ!」という方が多くなっていますね(笑)。
今までは「○○さんの奥さま」、「○○ちゃんのお母さん」と、ある程度、着るものが規制されていた方たちが、そこから弾けているのかもしれませんね。

sendai 4.JPG●年齢層は少し高めの方が多いということですか。
鎌田
 そうですね。50代、60代、70代の方が多いですね。親子3代でご利用いただいている方もいます。洋服の好みが似ていれば、兼用でお召しになれますからね。

●ターゲットは年齢が高めになっていますけど、若い方にも着られるようなものも取り揃えているということですか。
鎌田
 そうです。体型や年代を選ばないお洋服を扱っています。

●今は何店舗あるのですか。
鎌田
 仙台市内に5店舗です。


個性ある服をセレクト


●先ほど拝見しましたが、個性的な洋服を揃えていらっしゃるのですね。
鎌田
 そうですね。着心地が良くて肌に優しい素材を追求していくうちに、天然素材が中心の「ゆるフィット」なデザインが多くなりました。

●どのようなところから仕入れているのですか?
sendai 5.JPG鎌田
 国内のデザイナーズブランドで、カジュアルからフォーマルまで、ベーシックを中心に着やすくコーディネートしやすい、遊び心のあるアイテムをセレクトして仕入れています。

●ほかにないお洋服を揃えたいということですか。
鎌田
 そうですね。女性は同じ服を着ている人と会うのが嫌なので、自分しか持っていないもの、数量限定のものなど、希少価値のあるものに引かれるんです。ですから「ビーシックでしか扱っていないもの」にこだわって品揃えをしています。

●ご自身の目で見て「このブランドはいいな」と感じられて仕入れているのですか。
鎌田 
そうですね。作り手の顔が見える服、着ているだけで幸せな気持ちになれる服をセレクトして仕入れています。

●オーナーのファンもいらっしゃると思いますが、スタッフの方々にもファンがいらっしゃるのでしょうね。
鎌田
 おしゃれが大好きで入社していますので、お客さまから「あなたのファッションアドバイスでコーディネートをお願い」と言われると、生き生きとして接客をしています。
また、スタッフが自らビーシックの「クレド」という「三つの柱」をつくって、朝礼などで唱和しています。

三つの柱

●最大のおもてなしを
感謝の気持ちを感動という形でお客さまに提供します。
●架け橋
人と人、洋服と人、地域と社会、現実と非現実との架け橋として地域社会に貢献します。
●前向きに謙虚な気持ちで
限界を決めず、目標に向かって前進し続けます。

●社員自らが提案したり、永年勤めている方がいらっしゃるのは、オーナーのスタッフに対する心遣いがあるからでしょうね。
鎌田
 どうでしょうかね(笑)。本店の店長は出産してもウチで働いてくれています。

●働き甲斐のある職場なのでしょうね。
鎌田
 楽しいですよ(笑)。お客さまから「この前、あなたに選んでもらった服がみんなにほめられたのよ!」などと言っていただけると、本当にうれしいですからね(笑)。

sendai 7.JPG●誰でも自分の着る服に対して、自分なりにイメージしていると思うのですが、そのイメージの殻を店員さんなどのアドバイスによって破ったとき、違うものが発見できる喜びもあるのでしょうね。
鎌田
 そうですね。ご自分でお選びになる場合、白や黒などのベーシックなものが多くなりがちですが、実はカラフルな色も似合うことに気がつかれたりしますね。
色で勇気づけられ、元気が出たりしますからね。そういうことのお手伝いができるのはうれしいですね。

●8割くらいが固定客とおっしゃっていましたが、会員制度などはあるのですか?
鎌田
 ビーシック共通のポイントカードがあります。年に数回のイベント時に、2~5倍の特典付きボーナスポイントを実施しています。お客さまはその時期を楽しみにされているようです。


仕入れでは感性を大事に


●仕入れは、どなたがされているのですか?
鎌田
 店長とサブのスタッフが行っています。どうでしょうかと聞かれたら一緒に行きますが、基本は現場の店長に任せています。

●仕入れはシーズンを先取りするので難しいでしょうね。
鎌田
 そうですね。忘れたころに入荷することもあります(笑)。2月~3月に秋冬物の展示会があるのです。それが夏ごろに入荷してきますからね。そして秋冬物のセールが終わったころに次年度の秋冬物の展示会ですから。

●恐いですね。今年は寒かったですが、来年はどうなるか分かりませんから、そのあたりは賭けみたいなものですね。
今はお洋服を売っていらっしゃいますが、ファッションということになると、ヘアスタイルやアクセサリー、靴などもありますが、そこまで広げようとは思っていらっしゃらないのですか。
鎌田
 靴をもっと扱ってほしいと言われます。洋服も同じなのですが、靴はサイズや色がたくさんあるので、管理するのが大変で、そこまで手を出せないでいます。いろいろなメーカーから、靴も扱ってほしいと言われますけどね。


価格でなく価値で勝負


●売上げはいかがですか。
鎌田
 おかげさまで、全店が伸びています。

●「価格ではなく商品価値で勝負されている」というところが伸びている理由なのでしょうか?
鎌田
 そうですね。ウチのようなブランドのセレクトの仕方は全国的に見ても珍しいと、あるブランドの営業の方に言われました。気づいたら今、15ブランドくらいを扱っていますからね(笑)。

あとは社員が育っていることと、街中のブティックがなくなってきていることもあると思います。
●街の小さい個性的なお店がなくなってきているから、みんなが着ていない服が着たいと思ったら、このお店を選んでいるということですね。
鎌田
 お客さまが年々増えている要因の1つは、そういうこともあるでしょうね。

●ファッション業界全体を見たら、今は厳しいですからね。
鎌田
 そうですね。大きなメーカーでも売上げが前年比70%台とか80%台ですからね。

●そんな中で、多くのショップが低価格志向に走っていますよね。
鎌田
 当社はプライスではありません。たくさんのお客さまを輝かせたいという思いで商売しています。

●個性的でおしゃれな服だけをセレクトしてお売りするということですね。
鎌田
 そうです。だからお友だちを連れてきてくださったり、口コミで来てくださる方がいらして、長く続けられていられるのです。

●友だちを連れてきてくれるのは、すてきなことですね。
sendai 8.JPG鎌田
 このエリアは、NHKのカルチャースクールやスポーツクラブがあり、その帰りなどにお友だち同士で毎週、お寄りくださる方もいます。

●このお店には負けたくないというところはありますか。
鎌田
 ないですね(笑)。ただ純粋に、お客さまに楽しんでいただくことだけです。周りの方から「着ているお洋服がおしゃれになったわね!」と言っていただけるように、良い商品をおすすめしていきたいと思っています。

●5店舗あるとのことですが、今後も増やしていくお考えですか?
鎌田
 私はお店でお客さまと対話することが楽しいので、実は隠れ家的な小さなお店で、〝知る人ぞ知る〟という感じでお店をやりたかったんです。でも、いつの間にか五店舗ということになりました(笑)。

●各店舗でお客さまの層は違うのですか。
鎌田
 そうですね。でも、お客さまはいろいろな店舗にいらしてくださっているみたいですね。


オシャレな社交場へ


●最後に、これからもご自分の感性でステキな洋服を置いて、お客さまと接していかれると思いますが、この先「こうしたい」というものがありましたらお願いいたします。
鎌田
 お客さま同士がお店で仲良くなられることも多いですね。ご主人がお亡くなりになり、お1人で住まわれている方も多くて、1日中どなたともお話をせずに過ごされている方が増えています。ですから、お客さま同士の交流の場などをつくっていければと思っています。
オシャレが大好きな方々の集まりなので、「そのお洋服ステキね!」とか「その組み合わせいいわね!」などと、楽しいおしゃべりができる社交場がつくれればと思っています。
それに、われわれの世代は介護の世代で、お母さまにお洋服を見せたくて、お母さまの車椅子を押していらっしゃる方もいるので、この店舗もバリアフリーで段差がないように作り直しました。車椅子になってもおしゃれを楽しみたいお母さま方に、介護用の服ではなく、脱ぎ着が楽なお洋服とか、出かける時におしゃれに羽織れるようなお洋服も用意していきたいと思っています。

●後継者はいかがでしょうか。
鎌田
 一所懸命働いてくれている社員の中で、〝私が!〟という人がいたら任せようと考えていますので、身内からは考えていません。

●本日はお忙しい中、ありがとうございました。

この取材の後に、東日本を中心に巨大地震が発生し、甚大な被害をもたらし、今も多くの方々が苦しんでいます。
幸いにも鎌田社長をはじめ、従業員の皆様方は難を逃れて無事でした。
しかし、取材した「ビーシック」がテナントとして入っているセルバ泉ショッピングプラザは、立ち入り禁止が続いている状態です。
鎌田社長は、「きっとこの機関誌が出るころには、立ち入り禁止が解けて、お店はオープンできると思いますよ!」と、電話口で明るく答えてくれました。
このたびの大震災に見舞われた皆様方におきましては、心よりお見舞い申し上げます。そして、1日も早い復興を心より願っております。