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店人いま 248
中津川市は、名古屋からJRで1時間20分の距離にあるため、比較的に名古屋市の商圏には含まれず、中山道中津川宿としての商人文化が色濃く残り、独自の商圏を築いている。また、中津川の人たちは日専連(専門店会)を知らない人は少ないと勝野社長は言う。中津川の商人は、そういう地元の人たちに支えられ、商人も地域住民を支えている。
そして勝野社長は、専門店の王道は路面店にあるとし、理想としてはヴィトンやエルメス、日本の老舗と言われるような店を目ざし、サービス・ホスピタリティーはディズニーランドのような〝わくわく感・期待感〟を提供できる店にしたいと言う。
中津川、そして日専連をこよなく愛する勝野社長は、次のように言った。
「日専連は志のあるものが集まる専門店集団です。志があれば、必ず何かが生まれます。今の時代には、志が大切なんです」
専門店の王道は路面店にあり
日専連は、虚心坦懐になって志ある専門店集団に回帰すべき
勝野安和 氏 有限会社ひかりや(中津川会)
きれいにする気持ちと売る気のバランス
●創業はいつですか。
勝野 父が初代で、昭和26年5月の創業です。最初は小間物屋でした。ボタンや歯磨きなどのちょっとした雑貨を扱う小間物屋で、きっと戸板一枚の店から始まったんでしょうね。
●今は何店舗あるのですか。
勝野 3店舗です。中津川に2店舗、恵那に1店舗です。
●化粧品は毎年新しいものが出ますが、仕入れはどうされているのですか。
勝野 どこも同じだと思いますが、男性が仕入れることはまずありませんね。ただ、大枠は決めます。
●化粧品の販売は、美容部員さんのアドバイスを受けて、その人が気に入れば買うけれど、そこがすごくデリケートだと思うのですが。
勝野 だからよく勉強してもらわないといけないし、お客さまを本当にきれいにしたいという思いが強くないとダメですよね。きれいにしたいという気持ちと、売るという強い意志をバランスよく持っていることが大切です。
●社員は何名いらっしゃいますか。
勝野 正社員は14人ですが、メーカーからの派遣社員さんを合わせるともっと多くなります。
●勉強会などはされていますか。
勝野 メーカーの勉強会は、ほぼ毎月あります。あとは独自で月1回行っています。
●メーカーもいろいろありますね。
勝野 各メーカー担当制にしています。従業員が担当以外のメーカーを知らないというわけにはいきませんので、月に1度は担当外のメーカーも勉強してもらっています。
担当制にしないで、全メーカーを勉強させている店もありますが、私は担当制にして「あなたはこのメーカーに惚れてね」と言っています。そのほうが現場は売りやすいと思います。
●化粧品はステータスみたいなところもあって、あまり安いものは良くないと思われていますが・・・。
勝野 化粧品の場合、高いもののほうが間違いなく良いです。1万円のスーツを買ったときと15万円のスーツを買ったときと、脳がどう反応するかを想像してみてください。化粧品の場合、高いものを買ったときのほうが、脳がはるかに肌に良い指令を出すと思います。これはある程度、科学的に証明されているんです。
●そういう心理が働くんですね。
勝野 高いものは大事にしますよね。化粧品も大事にしますし、ご自分の肌も大事にするんです。100円、200円のものでは、なかなかそういう感情にはなりません。もちろん高いものには良い成分が含まれています。それを正しい方法で毎日コツコツと努力していただくことが大原則です。その努力のためのお世話ができると売上げも良くなるということです。
知っていただくと正しく使います。正しく使うからキレイになって、正しく減っていきます。そしてなくなったらリピートしていただけるんです。
若い自分に店を任せた両親は立派だった
●お店を継ぐ決心をされたのは?
勝野 私は小学生のときからこの店を継ぐという教育を受けてきて、抵抗しつつも必ず継ぐだろうという思いはありました。
●引き継がれてどれくらいになりますか。
勝野 大学を卒業して東京新橋の化粧品店で1年半ぐらい店長修行をしました。販売も必要なときはしましたが、主に店の管理、雑仕事ですね。その店が再開発事業のために移転することになって、退職して帰ってきましたが、そのときから父は私に任せてくれました。会計は握っていましたが、店を改装したい、こういう商品を入れたい、この商品は切りたいというようなことは、ほとんど任せてくれました。
私は今、56歳ですが、その父の決断はすごいことだと思います。なかなか自分の子どもに お店の経営一切を任せられないですよ。母は当初、一緒に販売していましたが、途中から家内に任せてくれました。父も母も立派なものです。あらためて感謝します。
●奥さまの力もあったんでしょう。
勝野 子どもが小さいときは、大変でしたが、途中からは戦力になって、今は接客・従業員教育など、どれをとってもかけがいのない大黒柱ですよ。
●社員は女性なので、若いころはご苦労なさったんじゃないですか。
勝野 女性の最大の弱点は長く続かないということです。そして悩んでいるからといって、1対1で飲みに行くなんてこともできません。ですが相手が女性だと、逆に楽しいですよ。また女性に対しては、女性よりも男性のほうが指導しやすいです。男性対女性の場合、言い過ぎたなと思っても取り返しがつきますが、女性対女性の場合、微妙ですからね。女性が男性を叱りやすいかどうかはちょっと分かりませんが・・・(笑)。
●エステもやってらっしゃいますが・・・。
勝野 商品を販売するためのエステです。たくさん買ってもらった感謝のエステ、レッスンのためのエステなどをやっています。有料のエステもありますが、そんなに高くはありません。どこもやっていますから、エステそのもので差別化することはありません。
●エステをされるお客さまは多いですか。
勝野 結構、多いですね。カウンセリング力が最大の武器です。
●それが化粧品の販売につながっていくわけですね。
勝野 それもありますし、買ってもらったお礼の意味も、両方あります。
専門店の王道は路面店にあり
●男性化粧品についてはどうですか。
勝野 カップルは別としても、男性にはできれば店に入ってほしくないですね。今、先端的な店は、ほとんど男性はオフリミットです。女性のためだけの店づくりをしないと良い店にはなりません。
男性が頻繁に出入りするところで、化粧品は買いたくないのが女性の心理だと思います。化粧品は雰囲気のなかで買う商品なんです。お客さまは、ディズニーランドと同じホスピタリティーを求めているんです。楽しくて、気持ちの良い雰囲気です。田舎の化粧品屋であってもね。だから、どこまでおもてなしの心をディズニーランドに近づけるかということです。
今、良い店と言われているところでは、男性用化粧品は置いていません。うちは田舎ですので、多少は置かなければいけないんですが...(笑)。
●お客さまの層はどの辺ですか。
勝野 すべてです。田舎ですから人口もそれなりですし、そこで客層を論じるのは無理です。強いて言えば年代層ではなくて、上質な客層ですね。若い人でも年配の方でも質の良い客です。田舎は上質であっても親しみやすいということも必要ですね。田舎ですから現実路線も出さなきゃいけません。良質な店づくりは、まさに専門店の基本ですね。
●内装は時によって変えられているのですか。
勝野 化粧品店は改装しないとダメなんです。空間が大事ですから、5年から10年間隔で改装しています。商品が変わってくるので、店がマッチしなくなってしまうんです。10年ではちょっと遅いかもしれません。
●以前、化粧品の割引販売が話題になりましたね。
勝野 あれで全国の化粧品屋さんの売上げが下がって、苦労したり廃業したところも多いのです。圧倒的にドラッグストアや直営のほうが大きいですからね。化粧品専門店のライバルは、今やドラッグストアや通販です。
●同じ商品なのに、価格が違っていることは実際にあるんですね。
勝野 われわれ専門店は十何年もかけて専門店専用商品を育ててきました。専門店専用メーカーもあります。
お客さまは、同じ商品なら安いほうが良いという方ばかりではないんです。化粧品は「美」に関わるものですから、単純に安ければ良いとはならないんです。安いにこしたことはありませんが、お客さまは専門知識を持つプロのカウンセリング、つまりキレイになる理由を求めています。
●将来展望についてお聞かせください。
勝野 ショッピングセンターのように、人の集まるところでは比較的よく売れます。でも、上手なカウンセラーのいるステキな空間のある路面店を目ざしています。専門店の王道はやはり路面ですよ。地域としても絶対的に必要です。ヴィトンに匹敵するような店というとおこがましいですが、本来の化粧品専門路面店が確立できることが理想ですね。そのためには、わざわざ路面店まで足を運んでもらうための、トータルでの魅力を出していく努力が必要です。
●でも、勝野さんも路面店として、しっかりとご商売されているではないですか。
勝野 ここでは狭いですね。30台くらいの駐車スペースがあって、赤ちゃんも連れてこられるし、お年寄りも立ち寄れる店内環境があって、商品はもちろんですが、空間とサービスが目立つというような店ができると、地域にも貢献できるんじゃないでしょうか。
日専連があり、人の和が中津川を支えている
●勝野さんは日専連中津川の副理事長や、商店街連盟の顧問などに付いていらっしゃいますが・・・。
勝野 昔はほとんど店の仕事はしていませんでした。去年までは、まちづくり・商店街活動専門で、商売は二の次でしたね。今が一番、仕事をしていますよ(笑)。
●中津川の商業を長年見てこられ、どう感じていらっしゃいますか。
勝野 中津川は〝地の利〟が良いですね。名古屋から快速で1時間20分という距離は中津川という独立した経済圏をつくるのに十分です。それからバイパス沿線に平日専連があり、人の和が中津川を支えているらな土地がなかったことなどで、中山道中津川宿の商人が残ったんです。何にもまして、日専連中津川がありました。この地の利、人の和が中津川の商業を支えてきました。それでも時代の波は押し寄せていますから、この先は大変だと思います。商店街とは別に個の集団である専門店がきちんと残らないとダメだなと思います。
●中津川は素晴らしい自然に恵まれていますね。名古屋から電車で来るとだんだんと田園風景が広がってきて山も川もあり、心が落ち着きますね。中津川の駅を降りると商店もある程度あって、正直なところ、こんなにひらけていたのかと思いました。
勝野 住んでいる商人たちは、将来に対して少し悲観的ですが、よその地方都市に比べると数段いいですね。
●せっかくこれだけの自然が残されているわけですから、例えば観光協会とのコラボなど考えられるんじゃないですか。
勝野 そのとおりです。観光協会も努力していますし、中津川のお菓子屋さんたちも素晴らしい商売をしています。商業と自然を結びつけるのは難しいですが、中津川らしさをどう出すかってことでしょうね。名古屋へ行かなくても、東京に行かなくても、中津川の商店のほうが良いと思わせないとね。
中津川は良いお菓子がありますし、食べ物では美味しいものがたくさんあります。飲食関係は独自性を出しやすいんですが、われわれのように仕入れて売るものは、どこで買っても同じですからね。同じものならここで買うという理由、独自性をもっと出さないといけません。そういう努力を個店がしないと厳しい方向に向かうでしょうね。
●確かにそうですね。仕入れて売る商売は人、サービスなどいろんな付加価値が必要ですね。
勝野 中津川の人たちは、みんな日専連を知っています。そういう街だからこそ、地域の商人が残って地域を支えていかないといけません。
●中津川にはアピタがありますね。
勝野 アピタ中津川店は、全国でも少ないと思いますが、郊外ではなくて駅から300メートルのところにあるんです。これが隣町との中間、田んぼのど真ん中にできていたら、もう中津川の商業は終わっていたかもしれません。
●では、アピタにも頑張ってもらわないといけませんね。
勝野 うちも出店していますしね。
今度、街なかに中心市街地活性化認定計画の事業で、図書館ができます。財政の問題で反対運動が大きかったんですが、今、人を呼べる公共のハコモノは図書館なんです。
子どもからお年寄りまで図書館に集まるんです。広くてきれいで、ちょっとした喫茶店やレストランがあって、福祉サービスもあったらいいなと思っています。もちろん、そこではお金は使いませんが、人が集まってくることが大切なことです。
そうなると図書館に来た人が、うちの店にも寄っていただくための商品・サービスを考えないといけません。そのためにも、日専連のお店をはじめ、良いお店は全国にたくさんありますので、参考にしていきたいです。
●しっかり、自店を見つめて、店づくりを行うということですね。
勝野 「学ぶ」とは「真似る」からきているんです。素直に真似る人が、そこに自分らしさを工夫していくわけです。虚心坦懐になって良い物を真似ることは必要ですね。真似ても同じことはできません。能力も、環境も違いますからね。そこに自分らしさをどう出すかが問われますよね。
●では最後に、これから取り組んでみたいことなどございましたらお願いいたします。
勝野 日専連は、志のあるものが集まる専門店集団という原点に回帰しないとダメです。志があれば必ず何かが生まれます。志のないものが集まっても烏合の衆になるだけです。今のこの変革の時代には、「志」が大切なんです。
●とても良い話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
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