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ホットプレイス訪問 177

ひたち地魚倶楽部

―商売はやり方次第―
40店が加盟する地魚倶楽部 未利用魚の地魚料理でまちおこし

                 さすらいの商売繁盛伝道師 高桑 隆

女子の本音は、〝少し不良っぽくて、規格外の男子ってカッコイイ!〟だった

 歳のせいなのか、最近よく昔のことを思い出す。田舎の中学3年生のころ、ホームルームでこんなことがあった。
 クラス担任が、〝今度のホームルームは、クラス委員中心で運営しなさい!〟とホームルームを生徒の自主運営にしたことがあった。クラス委員である僕らは、ない知恵を絞って、「男子の理想の女子タイプ、女子の理想の男子タイプ」を、クラス全員からアンケートし、その結果を話し合うことにした。(今考えれば、なんてバカバカしいことをしたのかと反省するが、当時はかなり真剣だった...)
 女性陣の答えが、〝頭が良く、勉強もできるが、少し不良っぽく、世間の規格にはまらない危険なにおいのする男の子が、理想のタイプ〟だった。
 思わぬ答えにたじろいだ...。男子の求める理想の女子...そんなものは、もうどうでもいい。それよりも、女子が求める理想の男子像に仰天した。当時の私は15歳、予想もしない答えに〝へぇー、女ってこんなこと考えてんだ...〟初めて、異性の不可思議さを意識した瞬間だった。
 しかし、今になってみれば、そんなの当たり前。決まり切った型にはまった面白くない真面目男より、お笑いタレントみたいで、多少イケメンで、少しばかり金持ちなら、そこらの2枚目俳優よりずっともてるのが常識。
  タレントの藤原紀香も安達祐実も、そんな男に惚れて結婚し、離婚。頭が良くて美男子なだけじゃ、女性は退屈なんだな.。
 

 「規格外」という言葉は、今の時代に魅力的に響く。大河ドラマで大人気なのが、坂本竜馬。彼も脱藩浪士で、封建時代の決まり切った規格社会から、完全に外れた男だった。
 世の中が安定し、景気が良い時代には、規格にガッチリはまった者がもてはやされる。昭和40年代、欧米流チェーンストアが大流行した。ダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ、セブンイレブンと、全国に店舗網を広げ、同じように標準化された店舗が消費者からもてはやされた。
 しかしバブル崩壊を経て、成熟し、高齢化を迎え、閉塞感漂う今の日本では、政治家も経営者も、ワイルドで野心あふれた規格外の人物が求められている。
 日本の成長を支えた、一流大学を出た官僚経験者のエリートなどに、現在の難しい時代を乗り越える力はないと国民が感じているからだ。
 

 今までは、規格にあてはまらないモノは、人間でも食材でも不良品として捨てられていた。農産物や、海産物も同じである。
 一般の消費者には、なじみはないが、「規格外農産物」「規格外鮮魚」が多数存在し、形が不格好で見た目が悪いという理由だけで、市場流通にのらない膨大な産物が、ただ無意味に廃棄されている...。
 しかし、こんな「規格外品」にも、いよいよ出番がやって来る時代になったのである...。

自然物に、工業製品と同じ「規格」を当てはめ、大量廃棄する愚かさに目覚めよ!

  09hot-01.jpg農産物には、「規格」という基準をもとにした、近代的な流通制度が整っている。キュウリは真っすぐで何センチから何センチ...と決められ、トマトは何センチの円形で、何グラムから何グラムの間が合格で、等級がつけられる。
 

 それ以外の野菜は、すべて〝規格外品〟で、農協の共販(中央卸売市場)には出荷できない。しかし、自然の産物である野菜に、そんなにきっちりした形の良い物がどれだけ存在するのか?
 子どものころ、学校の帰り道に寄り道をして、畑から真っ赤に熟したトマトを拝借し、おやつ代わりにした。そのトマトはおいしかったが、不格好なトマトだった。
 

 大根もそうだ。人間の股のように2つに割れた真っ白い大根。思春期の私には、いやに妖艶に感じられたものだった。
 しかし、これらの農産物は、農協の選果センターで規格外品としてはねられ、捨てられる運命だったのだ。

 魚もそうだ。底引き網漁というものがある。当然海の底を引っ張るから、見たこともない深海魚などがたくさん入る。市場には出せないから、その場で漁獲量の20~30%は捨てられているのをご存じだろうか...。
 正確な統計は知らないが、農水産物の約30%は、畑の隅や海に捨てられていると聞く。
 ところが、それらの不格好な規格外品でも、料理の食材としては問題がない。むしろ、美味しい料理となって生まれ変わる可能性を秘めている。
09hot-02.JPG こうして、捨てられていた、または利用されていなかった規格外の地域資源を活用し、まちおこしに役立てようとする運動が各地で盛んになっている。
 今回は、未利用の「地魚」でまちおこしに取り組んでいる、茨城県日立市の活動を取り上げた。

*ひたち地域資源活用有限責任事業組合作成の、「漁協と飲食店との連携による新ビジネスモデルの取り組み」より要約

 市場価値が極めて低く、飼料向けにされたり、漁業関係者が自家消費している魚類=「隠れた地魚」がここ茨城県日立市にある。
 一方、景気低迷のために、飲食店は厳しい経営状況に置かれている。この両者が連携して、付加価値の高い「地魚」料理を開発し、地域資源の有効利用と、漁業生産量の増加、新たな「地魚」料理の開発を図ることを目的に、「ひたち地域資源活用有限責任事業組合」が平成20年7月に組織された。
 

この連携を確かなものにするために、漁業関係補助金を活用した画期的な最新式冷凍設備(CASシステム)を導入し、「地魚」の新たな地元流通・販売システムを確立すべく活動が続いている。

「ひたち地魚倶楽部」の加盟飲食店が、従来は顧みられなかった地魚の流通を活発化させる

  09hot-03.JPG有限責任事業組合の統括組合員、佐渡淳三氏(氏は自ら、市内で最大の料亭「まんぼう」の経営者)に、日立商工会議所で「ひたち地魚倶楽部」についてのお話を伺った。

 茨城県日立市では、カンテンゲンゲ、ニギス(さくらギス)、オキハモ(イラコ穴子)、アカドンコ(エビナカジカ)といった、ほとんど知られていない地魚を、地元の飲食店で名物料理にするプロジェクトを、08年から展開してきました。
 水産試験場で、平成15年に調査船「いばらき丸」が竣工し、茨城県沖のアンコウやカレイ類など、底魚類の現存量を把握する調査が始まりました。
 結果、アンコウやカレイ類などのメジャーな魚と同量程度に、「地魚」が大量に茨城沖に分布していることが判明。
 

 またこれらの「地魚」は、調理・加工次第で十分に利用することが可能であることが、利用加工部の研究によって明らかになりました。
 こうして始まった「地魚」でまちおこしを行う事業は、限られた資源を有効活用するという、時代にマッチした取り組みであることから、テレビ、ラジオ、新聞など多くのマスコミにも取り上げられ、漁業生産の場では、ニギスやカンテンゲンゲなど、これまで利用価値の低かった魚種が、新たに取引きされるようになりました。
09hot-04.JPG 市内の飲食業者と、久慈町漁協、商工会議所が連携して、地魚を「食」のテーマにした農商工連携が開始されたのです。
 漁協は、水揚げした地魚を冷凍保存し、飲食店の注文に応じて配送します。
 

 より魚をおいしく食べてもらうために、漁協は最新の急速冷凍庫(CAS:細胞を壊さない画期的な冷凍設備)を導入し、傷みやすく流通が難しかった特産のシラスやシラウオも、冷凍保存して解凍しながら、お客さまに良い状態で提供できるようになりました。
 こうすると、簡単に生食用に出荷できるようになるのです。
 今では、「ひたち地魚倶楽部」は市内40店の飲食店が参加する、一大グループに成長し、市民からも支持を集めています。
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 こうした取り組みが実を結び、従来廃棄物同然だったニギスの産地価格は、1キロあたり150円から450円に上昇しました。
 今後これらの活動が、日立の新しい観光の魅力となり、地魚観光が盛り上がれば...と期待しています。

多くの〝資源〟が捨てられ放置されている。ビジネスチャンスは足元に眠っている

 最初に述べた、「規格外品」がよみがえる時代。まだまだ、目を皿のようにして周りを見わたせば、「地魚」のように、無駄になっている、または放置されているモノが非常に多いことに驚く。
 例えば「人」。〝リストラ(人員整理)〟という言葉が流行し、人を切り捨てる風潮がまん延している。しかし、本当に無駄な人材なのか、もう一度見直してもらいたいものだ。
 田舎であれば「老人」。60歳を過ぎたら、求人などあるはずがない。しかし、口うるさいが仕事のできる職人さんなど、有意な人財がシルバー人材センターなどに登録されている。老人は貴重な人財資源である。もっと、多方面に活かすべきではなかろうか。
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 平成の大合併で、地方の公共建物がガラ空きだ。これも非常にもったいない。もっと活用する方法があるはずだ。日が経ってしまうと、人がいない建物の傷みは早い。早急に手を打つべきだ。
 「食」の世界で言えば、野草。生活が近代的になり、自然の物を活用しなくなった。ヨモギなど誰も振り返らないが、漢方薬では非常に重要な薬草だ。運動グランドを見ていると、草原のヨモギを踏みつけるだけで、誰一人摘もうなどしない。踏まれているヨモギが哀れだ...。
 書いていくと際限がないくらいに無駄に捨てられ、放置されている規格外のモノが多い。見捨てられている資源も、活用の仕方次第でよみがえるはずなのに...。
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 連載開始以来、書いてきたことだが、〝商売はやり方次第!〟である。資源活用も、やり方次第に違いない。しかし、それには頭をフル回転させ、懸命に努力しなければ良い成果は得られない。たまには、じっと我慢しなければならない時もある。
 しかし、〝資源〟が捨てられ、放置されている足元に、どえらいビジネスチャンスが眠っている。
09hot-08.JPG 地魚は主流ではない。しかしそれは昨日までのことだ。いわき市の名物「めひかり」。あれも深海魚だった。今は魚が不足し、値がつりあがっているほど大人気だ。 カンテンゲンゲ、ニギス、オキハモ、アカドンコも大ブレークするかもしれない。その日を夢見て、「ひたち地魚倶楽部」にエールを送りたい。