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日専連第65回全国大会 記念講演会

急伸する中国経済 千載一遇のビッグなチャンスをどう生かすか!

講師 :  キング・アド 生井勲男

08namai-01.JPG急伸する中国経済。GDP、平均賃金、および消費購買力の増加。エネルギー自給率や食料自給率が100%を切った中国。これからの日本は、中国から物を買う時代ではない。日本の優秀な商品や技術を輸出する時代である。
 そこで全国大会記念講演会では、本誌連載『専門店に役立つ中国情報』などでおなじみの生井勲男氏に、中国の実情と日本が中国に対して行うアプローチの方法などについて語ってもらった。

世界経済を牽引する中国の底力

  中国は、北京オリンピックの後にバブルがはじけるのではないかとか、現在開催中の上海万博の後に、ちょっとおかしくなるのではないかとか、よく言われます。でも、中国という国は、私たちが考えていた以上に奥が深いようです。
  いつも思うのですが、「人口」というのはすごい。中国の現在の人口は、表向きには13億4000万人などと、いろいろと言われています。
 中国という国は、56民族のうち55民族が少数民族で、その全人口が把握できなかったり、第2子が生まれても戸籍に登録されなかったりするんです。だから、実際の人口はもっと多いはずです。
  これから世界の実権を握るのは、間違いなく中国です。国土の面積が日本の25倍もあって、13億人とも14億人とも言われる中国の国民が、とりあえず食べられるというのはすごい国力です。だから、北京オリンピックだろうが上海万博だろうが、それでバブルがはじけることなどあり得ません。北京オリンピックでは、北京全体の経済力のわずか3.3%を消費しているにすぎませんから、ほとんど影響はありません。上海万博も同じです。
  また、インドの人口は、現在11億~12億人くらいですが、2054年には世界最高の16億1000万人になると言われています。11億人から16億人に人口が増えても、食べていける力があるというのはすごいと思います。
  よく「BRICs 」(経済発展が著しいブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を合わせた4カ国の総称)という言葉を使います。その次に「NEXT11」(BRICs に次ぐ急成長が期待されるこの新興経済発展国家群)というグループがありますよね。ロシアは若干人口が減っているようですが、そのほかはすべて人口が増える国なんです。
  人口が増えても食べさせられるというのは、すばらしい国なんだと思ってしまいます。
  では、日本について考えてみます。日本という国は、江戸時代は鎖国ですから、食料自給率は否応なしに100%でした。
  日本の人口が減ったのは、有史以来3回あります。最初に減ったのが縄文時代です。そのころは、まだ稲作はありませんから、自然災害のために食料難になって、人口が減ってしまったんですね。
  その後、ずっと日本の人口は増え続けたのですが、江戸時代に2度目の人口減がありました。そして3回目の人口減が現在です。わずかではありますが...。
  人口が減るということは、国力が落ちるということです。逆に言えば、人口が増えて、その人口を食べさせられるといのはすごいことであり、私は「人口=国力」という見方をしています。

 

消費大国に変貌した中国

  ここ何年、ものすごい勢いで消費大国に変貌しているのが中国なんです。車で言うと、販売台数が1400万台になりました。このようなことは、誰も想像していませんでした。日本の新車販売台数は、400万台前後をうろうろしています。中国の場合は、我々の想像を遙かに超えて、一気に上がっています。アメリカだって、中国に抜かれるとは思っていなかったはずです。中国での今年の販売台数は、おそらく2000万台になるのではないでしょうか。
  なぜ、中国では車がこんなに売れるのでしょうか。調べてみると、現在のマイカーの普及率が8.8%です。中国人の裕福層は全人口の10%として計算すると、ほぼその範囲に収まるわけですが、当の中国人に聞いてみると、裕福層は30%に達していると言っています。そして、たまたま車を欲しがっている人の数を目にしたところ、4億2000万人もいるということでした。もちろん、インフラの整備の問題もありますから、そんなに一気に車が普及することはあり得ませんが、車の普及率がものすごい勢いで上がっているのは確かです。とにかくピッチが早いんです。
  給料も、ものすごい勢いで上がっています。2000年の農村部の給料は、2253元でした。ところが、2008年には4761元です。給料が8年間で2倍になったわけです。 都市部は、2000年の段階では6280元だったのが、2008年には1万5781元と2.5倍です。
 わずかの間にこれだけ賃金が上がったわけです。ということは、「消費力がついた」ということなんです。
  エンゲル係数でも、農村地区は1998年が58.8%だったのが、現在は43.7%です。都市部でも、同様に54%だったのが37.9%です。エンゲル係数が低くなったということは、生活が豊かになったということです。いろいろなものが買えるようになったということです。
  この中国のハイピッチな発展ぶりは著しく、人件費もどんどん伸びていって、農村部でも景気がよくなって、車の保有率も8.8%からどんどん上がっています。
  ただ、一番心配するのは、若者が日本を見捨てて中国にロングステイすることです。そのときには、日本の国はもう終わりです。それが目の前に来ているんです。今みたいに、若者を無視してしまったら、若者に負担をかけたら、彼らは日本にはいられなくなります。仕事もないわけですから...。
  広州から高速を使って花都という田舎町に行ったことがあるんです。もちろん田舎町ですから、ホテルに泊まるにしてもビジネスホテルしかありません。日本語のテレビがあるホテルが一軒だけあるというので、そこに泊まりました。
  すると、宿泊客は全員日本人なんです。部屋代は150元。だから、約2000円ですね。2人で泊まれば1人1000円です。
  部屋に入ったら、電子レンジと洗濯機が置いてありました。はっきり言って、バカにされてるのかと思いました。
  電子レンジがあるということは、コンビニで何かを買ってきて温めて、わびしい食事をするということです。洗濯機が各部屋にあるということは、クリーニング代がないから、自分で衣類を洗濯するということです。
  そして、次の朝、朝食を食べに行ったわけです。宿泊費の中に、朝食代は含まれていませんでした。朝食を食べるところは、一番上のフロアにありました。値段は10元です。日本円で130円。130円で米がついているわけだから、どんなにみすぼらしいおかずだったのかがわかりますよね。
  そこで宿泊している日本人が全員、下を向いて、ぼそぼそとそのみすぼらしい朝食を食べているわけです。
  朝8時半になると、ホテルの前にマイクロバスが迎えに来ます。すると、日本人がしょんぼりと乗っていきます。
  どうも彼らは、日本の某車会社の下請けの工場がどんどんできていて、仕事を求めてそこに働きに来ているらしいんです。
  私は思いました。中国に本当に出稼ぎに行く日本人の姿を見てしまったのかな、と。
  中国は、ものすごい勢いで賃金が上がっていますよね。片や日本では、年収200万円の人口が現在200万人で、300万円以下の人が300万人いるわけです。この調子で中国の賃金が上がっていって、元の切り上げを行ったら、年収2000万円の人よりも、中国人のほうが給料が高くなってしまうんです。しかも、生活費は日本の3分の1です。
08namai-05.JPG  そうすれば、日本の若者は、年収200万円でも仕事があれば中国に出稼ぎに行くかもしれません。日本で仕事がなく、ニートになるくらいなら、若い人は日本を見捨てて、中国に行ってしまう可能性は十分にあります。そうなったら、この日本はどうなるのでしょうか。
  それはともかく、中国の表向きのGDPは8%ということになっています。中国政府としては、表向きは低く抑えておきたい。当然ですよね。もしこれが11%とか13%なったら、元の切り上げの問題が出てきます。でも、実際には今年は否応なしに2桁を超してしまうのではないでしょうか。それくらい、中国は伸びているんです。
  これまで、中国は沿岸部を中心に発展してきたのですが、その沿岸部には農村部からの出稼ぎ労働者が多数いて、農村部の人口が足りなくなってきました。そこで中国政府は、リーマンショック以降、農村部に補助金を出して、その発展をサポートするようになりました。
  GDPも消費購買力も、たぶん10%を超すでしょう。

技術大国日本の取り組み

  世界の実権を握っていくためのポイントは、まずエネルギー自給率でしょう。そして2番目は食料自給率、3番目は水の自給率でしょう。
  まず、エネルギーについてです。エネルギー自給率が100%を切った国は、これから厳しくなります。ところが、日本の場合は18%しかありません。
  次に、食料自給率です。日本の食料自給率は、1963年の段階では78%もありましたが、現在は40%です。しかも、穀物ベースだと28%です。日本が輸入できなくなったら、貧乏になったら、到底食べていけるわけはありません。
  全世界の63億の人口は、これからますます増えます。ものすごい食料難がくるんです。ということは、日本も大変なことになってしまいます。
  3番目は水です。これからは、絶対に水が足りなくなります。けれど、違った視点で考えると、日本はこの3つとも、ものすごい技術力を持っているんです。日本は、いろんなノウハウで優れているんです。
  まずエネルギーで言ったら、太陽電池やソーラーシステムをはじめ、すばらしいノウハウがあります。活用の仕方によっては、ものすごい発展の余地があります。
  食料についても、安全、安心、おいしさ、すべて日本の農業は世界で最高なんです。『週刊ダイヤモンド』にも書いてありましたが、日本のリンゴが1300円くらいでも中国では売れると...。日本はそんなすばらしいものを作れるんです。日本は、食料自給率に問題があっても、高度な農業技術があるんです。
  そして、3番目の水。日本という国は、水に関してもすばらしい技術を持っています。ところが、世界中では水が完全に足りません。とくに中国ではまったく足りていない。中国には揚子江だとか黒竜江だとか、いろいろな川があって、あれだけの水があるにもかかわらず、使えるのはその3分の1しかありません。中国に限らず、これから世界は水の争奪戦です。
  中国は、食料自給率が100%を切りました。これから中国は、何でも日本のものをほしがってきます。でも、今の日本は野菜でもなんでも、50%が中国からの輸入なんです。100%を切った国から物を売ってもらっているわけですよね。中国がどんどん裕福になり、肉を食べ始め、生野菜を食べ始め、パンを食べ始めています。
  エネルギーの自給率も100%を切りました。現在、中国では石油がまるっきり足りなくなっています。よく言われるんです。「プラスチックは中国から輸入すると値段が安いんですか?」と。ところが、そういうものは決して安くないんです。原料となる石油が足りていないんだから...。だから、中国はアフリカに目をつけたんです。日本はそれに関しては遅れをとってしまいましたが...。
  08namai-06.JPG 4年前のデータでは、中国からアフリカに渡って資源開発をしている人の数は、50万人でした。ところが、現在は100万人です。ほんのわずかの間に倍増したわけです。
  日本の優れた商品やさまざまなノウハウ、技術を中国に輸出するなら、今がチャンスなんです。あと5年もたったら、日本のものは、もう必要ありませんよということになりかねません。そうしたら、日本には何も売るものがなくなってしまいます。
  いつも思うのは、中国という大きなマーケットに、日本の商品・技術をもっと売り込むべきであるということです。
  それぞれの分野で優れたノウハウや商品などを輸出することによって、日本にはビジネスチャンスが生まれるんです。今がチャンスなんです。はっきり言って、たとえば米でも、日本の米が最高においしいんです。でも、もうすでに中国の東北地区ではコシヒカリを作り始めたんです。ということは、先ほども言ったように、あと5年もたてば、日本の米はもういらないということになってしまうかもしれません。だから、チャンスは今しかないんです。
  ただし、これは民間レベルでやっていては、技術だけを取られたり、工場だけを乗っ取られたりするだけです。政府がらみでやらなければいけません。
  先日、中国の量販店の社長さんに、新宿で飲みながら聞いたんです。「日本のイオンやイトーヨーカドーが中国に進出したようですが、これは地元の量販店と競争になりますよね」と。
  そうしたら、日本人の場合は杓子定規だから、まったく競争にならないそうです。「やり方が違うから、日本の企業は中国ではあまり大きくなりません」と。あと、日本の場合は、政府が全然バックアップしてくれないとも言っていました。われわれはもちろん、台湾やほかの国でも政府が必ずバックアップしてくれます。その違いがあるから、われわれは日本に敗けることはありません。そう言っていました。

注目すべき義烏市場

  では最後に、義烏の市場について紹介します。
  私が義烏に初めて行ったのが10年前です。そのころは電気はないわ、特急に乗って5時間半もかかるわ、高速道路はないわ、ろくな食べ物はないわ、エアコンがほとんどないわで、それはひどいものでした。
  市場に行くと裸電球があって、4時半くらいになって暗くなると、店を閉めてしまう。そんな街でした。当然、外国人もいません。
  ところが、この10年間でまるっきり変わりました。特に、2008年の10月に、一気に義烏は変わりました。
  現在、義烏市場には6万5000社が入っています。6万5000社と言ったらすごい数です。1社あたり10分ずつ、1日8時間休まずに歩いても、全部見るのに3年半もかかるんですから...。「義烏に行ったら、この商品を探してください」とよく言われるのですが、探すのがとても大変なんです。
  2008年の10月に、汚い市場だったのが一気に大きく、近代的になりました。かつてそこに入っていたのは問屋だったんです。行商人が買いに行った市場だったんです。だから安かったんです。
  ところが、そんな市場が巨大なビルになったんです。代表的なものに福田市場がありますが、そこだけでも310万平米もあります。1つの市場で310平米と言っても想像がつきません。端から端まで歩けないんですから...。タクシーを捕まえないと無理です。
08namai-100.JPG  今は、市場の中をバスが巡回するようになりました。アメリカのショッピングセンターだって、バスの循環はあまり見たことはありません。それくらい大きくなったんです。
  そして、新しい市場に入ったのは、ほとんどが中国各地のメーカーなんです。これまでは問屋だったから、そこそこの値段がしたわけです。中国は人件費が高くなった、18%も原価が高くなったとみんな言いますが、競争が激しくなって、メーカーが来たということで、義烏の値段がものすごく安くなりました。
  腕時計なら腕時計の店が並び、ソックスならソックスの店がズラーっと並んでいるわけですから、価格競争が激しくなるのは当然です。そのため、義烏の商品価格が思い切り安くなってきました。
  よくみんなに言うのは、自分の思っている値段の10分の1以下と考えたら、それが義烏の価格だということです。そして、10分の1以上だったら買わないほうがいいでしょう。
  たとえば、今私がしゃべりかけているこのマイクの値段が自分が想像して5000円だとすると、義烏では500円以下なら買ってもいいということです。500円を超したら買ってはいけません。
  大連や広州、上海など、中国国内のいろいろな市場をまわったことがあります。雑貨についてはほとんどの商品が義烏の市場から仕入れられています。そして、上海だとだいたい義烏の5倍の値段で売られています。広州とか大きい街は2~3倍の値段です。それくらい義烏が安いのです。
  義烏の最大のメリットは、量が少なくても買えることです。もともと行商の街ですから、1ケース単位とか、少ない量で買えるんです。
  世界215カ国のバイヤーが、1日あたり20万人も来ています。世界215カ国の人が来るということは、世界の情報が入ってくるわけですから、1番新しい商品がそろうということにつながります。だから、これから日本で売れる商品を探すのなら、日本で売ってない商品を義烏で探すのが1番いいんです。
  よく言うんですが、おもちゃでも何でも、義烏でブームになった商品を日本で半年後に売ればいいんです。日本でブームになるのは、義烏の半年か1年後なんです。
  だから新しい商品、日本でこれからの売れ筋商品を探すんだったら義烏がいいんです。世界の情報が入ってくるわけですから...。
  お店としても、よそよりも早く商品を作らないと儲からないんです。どこでもみんな扱っていれば、価格競争になってしまいます。
  逆に義烏の欠点はというと、もともと問屋街だったため、中国人は機能的であればいいということで、とてもいい加減です。中国人は約束は守りません。あと、義烏の場合はキャッシュで行商人が買ったわけですから、当然ながら前払いです。
  でも、一番困るのは買い付けた商品を日本に持ってくるのが難しいことです。これが一番の悩みです。佐川急便とかいろいろ頼んでも、義烏には誰も行ってくれません。
  それも今解決しようと、これからもどんどん動いていきます。
  そして、一度義烏に行ってみませんか。