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一店逸品運動フォーラム2010を終えて...

各地で進化している一店逸品運動

NPO法人 一店逸品運動協会 理事長 太田巳津彦

運動ということ

 今春、一店逸品運動協会としては、初のオープンイベント「逸品フォーラム2010」を開催しました。
 開催の目的は、1人でも多くの方に、一店逸品運動を〝正しく〟理解していただきたかったからです。
 最近、テレビや新聞で、一店逸品運動について紹介されることが増えてきました。ところがマスコミは、 逸品運動の紹介というよりも、話題の逸品を取り上げるにとどまります。たとえば、お茶屋さんと豆腐屋さんのコラボで出来上がった、抹茶豆腐といった具合です。
 しかし一店逸品運動とは、こうした話題づくりを目的としたものではありません。また、逸品フェアの様子を放映したり、チラシを紹介することも多いように思います。
 このようにマスコミでは、逸品運動そのものではなく、話題の逸品や逸品フェアを取り上げてしまいます。
  08ippin-01.jpgしかし、一店逸品運動とは、一過性のイベントではありません。一店逸品運動は、「運動」なのです。運動ということは、商業者による日ごろの活動にほかなりません。もちろん、一店逸品運動も日常的な活動です。具体的には、毎月開催される逸品研究会が、一店逸品運動の基本となります。
 逸品という言葉は、最近よく登場するので、お客さまの抱く逸品に対するイメージも、多種多様です。
 概して、「珍しいもの」「オリジナル」「他にはないもの」といったイメージを、逸品に対して抱いているお客さまが、多いように思われます。しかし、一店逸品運動における逸品とは、珍しい商品ではなく、「おすすめ商品」です。
 したがって、一店逸品運動で生まれてくる逸品の概念が、地域のお客さまに浸透するためには、ある程度の時間がかかります。
 これまでお手伝いしてきて実感するのは、3年目になるとお客さまの逸品に対する反応が良くなるということです。
 たとえば、逸品のチラシを折り込んだその日に、逸品を求めて、お客さまが店頭にお越しになるようになります。すなわち、最低3年続けていれば、一店逸品運動が、地域に定着するのです。ところが、この「3年続ける」ということが、商業者の方はあまり得意ではありません。
 これまでの、商店街での事業を見ても、3年続けられたものは少ないようです。朝市にしても、チャレンジショップにしても、当初は盛り上がるものの、3年後には影も形もなくなってしまっています。
 「継続は力なり」です。
 逸品は生き物ですから、売れる時もあれば売れない時もあります。目先の結果に惑わされるのではなく、地域の運動として、じっくりと腰をすえて、一店逸品運動に取り組むことが大切なのです。

逸品は、お店とお客さまを結ぶ架け橋


 地元店の多くは、新規客にとって分かりにくい、入りにくいという欠点を抱えています。ところが、この「分りにくい、入りにくい」という欠点が、チャンスになるのです。お客さまにとっては、日ごろから気になるお店でも、どんな商品を売っているお店かが分からないため、簡単に入店することができません。
 ところが、逸品という具体的な商品が、前面に打ち出されることによって、お客さまは、お店をイメージすることができます。また、逸品を店頭に掲げることで、お客さまにはお店に入る口実ができます。
 逸品は、新規客来店のきっかけになります。したがって、気軽に入店できるような、ハードルの低さが逸品には求められます。高額商品やマニア向けの商品は、逸品には不向きです。
 さらに言えば、リピーターにつながる逸品であることが大切です。とくに、話題性や瞬時の売上げを求めないことです。逸品をきっかけに、これまで素通りしていたお客さまに入店していただき、逸品を知っていただくとともに、お店の良さを知っていただきましょう。
 逸品のひやかしでご来店いただき、お店のファンになっていただければ、再来店が期待できます。
 たとえば、各地で行われている逸品巡りツアーでも、逸品をおすすめすることはもちろんですが、お店を知っていただくことにも力を入れるべきだと思います。ツアーで訪れたお客さまには、商品説明だけでなく、お店を自由にご覧いただくことで、お店の特徴やこだわりを実感していただけます。

 

逸品つながりが街を活性化する


 一店逸品運動を進める中で、青森新町商店街では、「逸品つながり」という言葉が誕生しました。きっかけは、夏のビアガーデンの活性化とお聞きしています。それまで、夏の2日間、商店街主催でビアガーデンを開催していたのですが、ジリ貧状態でした。そこで、せっかく知り合った逸品仲間の力を貸してもらえないだろうかと考えたそうです。「逸品運動に参加しているあの店なら、きっとおいしいおつまみを出してくれるに違いない」ということから、それまで開催していた夏のビアガーデンを一新しました。
 逸品メンバーが、飲食店やホテルにお願いして、逸品のおつまみを出していただき、「逸品ビアガーデン」として生まれ変わりました。「おつまみがおいしい」と評判になり、お客さまが急増したそうです。口コミ効果で年々盛況となり、以前は銀行の駐車場で開催していましたが、昨年からは神社の境内を使った大掛かりな逸品ビアガーデンとなったそうです。逸品つながりという、参加店同士の強い絆があるからこそ、逸品ビアガーデンは成り立っているのです。
 また、青森新町では、隔月でお店巡りツアーを実施しています。ツアー開催の背景には、「逸品を常に意識しよう」との願いがあります。あってはならないことなのですが、年数を重ねるにつれ、逸品フェア期間だけの、一店逸品運動になってしまうことがあります。たとえば、参加店の中には要領がよくなり、逸品フェア間近の研究会にだけ出席するような不心得者も出現してしまいます。逸品フェアだけの逸品運動になってしまう危険があります。年間を通じて、お店巡りツアーを開催することで、参加店は逸品メンバーとつながっていることを常に意識し、逸品研究会に対する意欲を維持することができます。
08ippin-02.jpg お店巡りツアーや逸品ビアガーデンは、参加店のモチベーションを維持するために、〝逸品つながり〟を利用した活動です。
 そして、十日町の「逸品かわら版」も、参加店同士の仲間意識を盛り上げていくために生まれた活動の1つです。参加店が、リレー方式で他店を紹介したり、研究会での様子を告知していくことで、「ウチもがんばろう」と、参加店は意欲づけられます。
 参加店の信頼関係をベースにスタートした、逸品つながりですが、今では一店逸品運動を支える、大切な活動となっています。

 

進化し続ける一店逸品運動


 平成6年に、静岡市呉服町名店街で産声を上げた一店逸品運動ですが、着実に進化しています。たとえば、チラシの形状も、単なる逸品フェアのチラシではなく、年間を通じて使えるような工夫がされています。
 また、当初は逸品の紹介を目的としてスタートした逸品巡りツアーですが、参加されたお客さまから「普段はなかなか入れないお店にも入れる」という反応を感じ取って進化させています。名称を「お店巡りツアー」に変更して逸品だけでなく、お店の人や技までもご案内する定期的に開催されるツアーになってきています。
 さらに、店頭でのアピールの仕方も進化しています。当初はポスターやPOPが中心でしたが、今では多くのお店で手書きのブラックボードを出すようになりました。これなどは、与えられた販促物を使うだけでなく、参加店がそれぞれの思いを込めたり、趣向を凝らしたりするようになった当事者意識の現れだと思います。
 誰かの企画した逸品運動に乗っかるのではなく、自分たち1人ひとりが逸品運動を作り上げていこうという姿勢が強くなってきています。
 自主性の高まりは、研究会の進め方にも現れています。当初は、商工会議所や商工会の主導で、逸品研究会や逸品フェアの企画を進めるところが多いものです。
 ところが、最近では、参加者同士で実行委員会やプロジェクトチームを編成して運動を進めているところが増えています。まさに、一店逸品運動が商業者自らの運動に進化しているのです。「商業者自らの運動にしたい」というのが、一店逸品運動協会を立ち上げた、大きな理由の1つだったのでうれしく思っています。
 ちなみに、今回登場した青森、十日町、北九州の3カ所では、当初から商業者主導で運動が進められています。
 また、最近は、ブラックボードの研修会を開こうとか、プレゼンテーションの勉強をしたいといった声が、参加店から出るようになりました。
 一店逸品運動が、単なる商品開発や商品発掘にとどまらず、お店の活性化に向けて着実に進化していることを実感します。

 

一店逸品運動から生まれた新企画


 一店逸品運動で生まれた楽しい試みを、1つご紹介しましょう。これは、今春の千葉県松戸市の逸品フェアで生まれた催しです。逸品フェア期間中、逸品つながりの発展形コラボ企画として、「南仏プロヴァンスの夕べ」というイベントを開催しました。
 きっかけは、老舗フレンチ店のアイドルタイムの活用でした。逸品メンバーであるフレンチレストラン「美登利亭」では、昨今の不況の影響で日曜日の夜の顧客が激減していることに悩んでいました。何かよい集客策はないかと考えたときに、思い浮かんだのが同じく逸品運動に参加されているネットの旅行代理店「トラベラーズカフェ」さんとのつながりでした。
 「トラベラーズカフェ」さんは、「せっかくの逸品なのに発表する場所がない」ということでした。同店はインターネットでの旅行販売なので、基本的に店舗を持っていません。逸品フェア期間中は、自宅を開放してショウルームにしていましたが、訪れる人は少なく逸品を告知するために、どこかに会場を借りて逸品の紹介をしようかと話していました。
 ちなみに同店の逸品は、「南仏プロヴァンスの個人旅行」です。「単なる旅行のご案内では、なかなか集客できないのではないか、お客側も旅先のご案内は表向きで、きっと海外旅行を売りつけられるに違いない」と思ってしまうだろうと、話していました。
  08ippin-03.jpgそこで、先ほどの美登利亭さんの、日曜の夜の活用が結びついたのです。地元でも老舗のレストランで、南仏のイメージにピッタリ。しかも有料で行えば、押し売りされるというお客さまの危惧は、払拭できると考えたのです。
 早速、トラベラーズカフェのオーナーの四谷さんに、お話をしたところ、「ぜひやってみたい」とのことでした。私は、四谷さんに、具体的な進め方についてお話しするとともに、もう1店を加えた、3店でのコラボレーションを提案しました。実はもう1軒思い浮かんだのが、酒屋さんの「日暮商店」でした。同店は、息子さんが、海外で修行をしてきて、ワインについての知識が豊富ですし、ワインの品揃えも充実しています。
 ところが、間口が狭く、店頭から店内の様子が見えないので、ワインにこだわっているお店とは、一見して分からないという弱点を抱えていました。老舗フレンチのお店、ワインにこだわる酒販店、南仏の旅を得意とするネット旅行代理店、この3店がコラボレーションすれば、魅力的なイベントができるのではないかと考えたのです。
 このように、企画のきっかけを作ったのは私ですが、実際に企画し、実行に移したのは3店舗の皆さんです。正直、実現することはあまり期待していませんでした。
 これまでにも、こうした企画を他地区で持ちかけたことがありましたが、「面白そう」で終わってしまい、実現に至っていなかったからです。
 しかし、今回は話だけで終わらずに即行動し、開催にこぎつけました。このあたりのフットワークのよさは、「さすが逸品参加店」と感心させられました。
 参加者の募集は、3店それぞれが、お店のお得意さまに声をかけることを提案しました。理由は、募集経費の節約もありますが、3店それぞれに個性があり、お客さまから信頼を得ていると思ったからです。「当店の常連客は他店の常連客ではない」という事実が、大きなビジネスチャンスとなります。たとえば、日暮さんのお得意さんは、美登利亭さんのお得意さんではないということなのです。
 参加費3000円にもかかわらず、2日間で延べ50名のお客さまが参加してくれました。当日、美登利亭さんはプロバンス料理を出してくださり(解説付き)、四谷さんはプロバンス地方の映像を紹介し(ミニアートの手作り教室付き)、日暮さんはプロバンス地方のワインを提供(ワインセミナー付き)してくれました。お客さまは、プロの技とプロの話に大いに満足していただけたようでした。
 うれしいことに、プロバンスツアーのお申し込みをいただくといったオマケもありました。
 この企画の成功の背景には、逸品運動に参加しているお店の強みがあります。逸品運動の参加店は、皆さん商売熱心なので有力な顧客を持っています。もちろん、その道のプロですから、その存在を知れば新規客は訪れてくれます。
 弱みは、お店の魅力をうまく伝えるすべが今までなかったということです。このように、逸品つながりを活用すれば、さまざまな事業が展開できるのです。
 地元に信頼されるお店の集合体である、「逸品つながり」からは、これからもさまざまな活動が生まれるでしょう。
 そして、こうした活動を通じて、一店逸品運動は進化していくのです。