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一店逸品運動フォーラム2010 「パネルディスカッション」
まち・商店街・店を元気にする「一店逸品運動」の英知が結集
日専連の組合店もそれぞれのカラーで取り組む一店逸品運動(中)
前月号では、一店逸品運動に取り組んでいる状況や取り組み、キッカケなどについて掲載しました。
今回はもっと踏み込んで、各地域で取り組んでいる逸品運動の特長や苦労したこと、そして将来展望などについてご紹介させていただきます。
パネラー 青森新町商店街一店逸品運動ワーキング
部長 伊香 佳子 氏(日専連青森)
十日町個店活性化勉強会
会長 山内 直道 氏(十日町専門店会)
小倉逸品屋フェア実行委員会
委員長 祷 峰晴 氏(日専連北九州)
コーディネーター:一店逸品運動協会 理事長 太田 巳津彦氏
逸品運動の特徴
太田 お三方が取り組まれている逸品運動は、それぞれにこだわりや特長があるかと存じますが、そのあたりをお話しいただけますでしょうか。
伊香 うちの特長は「お店回りツアー」に力を入れていることです。1組のツアー構成は、お客さま8名程度。それ以上だとお客さまに説明が行き届かず、店内の移動も大変なので、対応できる商店街ガイドの人数に応じて、8名ずつ3組から4組の募集で年6回実施しています。
当初は、逸品やお店紹介のみが主体のツアーでしたが、今では逸品をその場で購入いただいたり、口コミで広めてくださるので、直接販促につながります。また、最初のころは回る店舗数がもっと多かったのですが、現在はお店の数を減らし、説明のあとゆっくり見ていただけるよう1店舗あたりの滞在時間を増やしました。また逸品のお店での昼食は、最初は補助金があり、取り組みの浸透のためにも無料でした。現在は、自己資金での取り組みなので、ほぼ所要金額通りを参加費としていただいていますが、毎回満員になります。また、ツアー継続のおかげで、お客さまとの絆が新しい形でできるようになりました。
また、逸品フェアの区切りは特にしていません。1年かけてせっかく決める逸品ですから、毎年3月に新聞折込でデビューし、掲載した逸品カタログは、各店頭、ホテルのフロント、観光案内所などに置いて、1年間ずっとおすすめしていくようにしています。
山内 特長は、逸品運動に参加しているメンバーに若手が多いということでしょうか。もう1つは、会費が高額ということです。1店舗月額1万円をいただいていました。しかし、ほかの地域に比べて高すぎることが分かったので、今は6000円に下げました(笑)。また、1店舗から何名が参加してもよい形にしているので、なるべく従業員や販売担当者を出してくれるようにお願いしています。現場にいる方に勉強していただきたいですからね。
私も文具屋の社長ですが、会議には積極的に従業員を出しています。うちは逸品を決める決定権も従業員に持たせています。
お店巡りツアーは、8月から毎月開催しました。「かわら版」も毎月1回出しています。それらを毎月やることにしたのは、勉強会だけではモチベーションが上がらなかったからです。
「かわら版」は、それぞれの店舗で手配りしています。新聞折り込みなどはしていません。「お店巡りツアー」と「かわら版」は、お客さまとじかに触れ合える、とても大切なツールです。
ツアーに参加される方から「次はいつですか?」とか、お礼状をいただいたりします。うれしいですね(笑)。地元にお住まいの方でも「こんなところにこんなお店があったんですね」とか「敷居が高そうで入れなかったです」という意見をお聞きすることができました。また、「こんなに気さくな店主さんがいらしたんですね」とか「こんな物を売っているなんて知りませんでした」という意見もいただきました。
祷 小倉では年間を通していろいろなイベントを行っているので、イベントに対してのマンネリ感が消費者をはじめ、店主や従業員にもあります。スタンプラリーなどをやっても、スタンプを押しに来るだけで、逸品を見ずに帰ってしまう方も多くいます。
理由はなんとなく分かっているんです。イベントをお客さま目線ではなく、自分たちの目線で行っているからだと思います。そこら辺を今、変えていこうと努力しています。また、商店街ごとに行うイベントでも、ほかの商店街でもお互いにPRするようにして協力し合うようになりました。このヨコとヨコの連携を大切にしています。
また、小倉は行政が行うイベントも結構あるので、ギブ・アンド・テイクで、こちらの情報も載せていただいています。これも1つの連携の形だと思います。
逸品運動に取り組んで変化したこと
逸品運動を行う前は、同じ商店街にお店があっても、お互いの店舗に入ることも、話すこともほとんどありませんでした。逸品運動の実施と逸品研究会を通じて、お互いの距離が縮まりました。
研究会では、実際に店頭に出ている方の参加をお願いしました。それぞれ直接接客にあたる立場から、また違う意味での連帯感も生まれ、イベントでも街全体のためという意識が高まり、商店街組織が活性化しました。
また「逸品お店回りツアー」の変形版、「覗き見ツアー」も実施しています。「覗き見ツアー」では、すぐ裏通りの神社も"覗き感覚"で見ていただき、まるで京都にでも来たような感じを味わっていただいたり、棟方志功ゆかりの場所や、地元ホテルのスイートルームなど、メンバー自身が街で覗きたいものをコースに設定して大人気です。
ツアー実施で生の声を聞けてお客さまとの距離感が縮まり、お客さまも商店街を応援したいのだということが分かったので、ある意味怖がらず、直接、街に対する希望などをお聞きする「茶話会」も開けるようになりました。例えばその中で「街に温泉がほしい」という声があり、それに応えて本当に温泉ができました。そのようにして仲間感覚を持ってくださったお客さまが、イベントのボランティアもしてくださいます。
また昼に実施するツアーでは、夜営業の飲食店に行けなかったので、新しく「新町逸品つまみ食いちょい飲みツアー」も始めました。楽しそうなタイトルと面白くお得な内容で、早くも人気を博しています。
山内 十日町では、一気に大勢の人が来る大きなイベントを開催するつもりはありません。「お店巡りツアー」も8人から10人くらいの参加者で、何回も開催する形にしています。逸品のお披露目会も店主が自分の店を空けることは難しいので、開催時間を1時間から2時間に設定しています。
効果が顕著に現れたのは2年目からですね。1年目はまずやってみようという感じでしたが、2年目になって各店のレベルが上がってきたように感じます。商品の説明や店内のレイアウトなども良くなってきました。ディスプレイに関しては、ブラックボードの勉強会も行いました。
逸品運動を通じて各店舗の意識が上がってきて、レベルアップしました。「逸品運動をやっているお店は違うね!」と、お客さまから言われるようになりたいですね。
祷 反省会などをとおして、参加した方々と本音で話せるようになりました。以前は、いろいろ言われて不機嫌になる方もいましたが、今では素直に聞き入れていただき、何でも言えるようになりました。
また勉強会では、参加しているお店の方には、ほかの各店舗を見て回るように言って、お店を見ていただいています。各お店を回るきっかけをつくったので、気軽に声をかけて話せるようになり、仲間意識が強くなってきました。
太田 逸品運動というのは、お店の人の意識を変えてもらうことが先で、いきなりお店が激変することはありません。新町商店街も7年目を迎え、初めのころと比較すると店舗も大分変わって、外からお店の中の様子が分かるようになってきました。お客さまのことを意識されるようになったので、目に見えて良くなってきたのだと思います。
逸品運動を進めていく上で気を付けたことは?
太田 各地域では、勉強会や逸品運動の取り組み方で微妙に違いがあるかと思います。進めていく上で、注意したことなどをお話しいただけますでしょうか。
伊香 7年目になるので、いろんな勉強もしてきました。もちろんマンネリも経験し、それを越えて思ったことは、逸品のことだけを突き詰めすぎると、きつくなるということでしょうか(笑)。
逸品運動を逸品そのものへの取り組みだけに限定せず、この取り組みで得た新たな絆をまちづくりに生かしていくなど、広い意味での運動としてとらえることで、参加者に無理なく自然に意識が浸透していくように思っています。逸品そのものを突き詰めすぎて、続かなくなっては何にもなりません(笑)。逸品運動は、何より気づくことが多く、商売にとって大事なことですから「運動の継続」が重要だと思っています。
また、自己資金になって、逸品カタログの作り方に非常にこだわったところ、高級感が加わりました。結果、「しんまちの逸品」ブランドへの意識が高まったようです。各店の毎年の逸品イメージも自然に高くキープされています。
7年間続けたことで、行政などから「新町商店街の逸品は良い」というイメージが確立しつつあり、また新たな動きにも繋がっています。これは、参加している私たちにとって、この上ない喜びですね。
山内 逸品を進めていく上で注意していることは、自分たちの店を考えることから、ブレないようにしています。特に、従業員やパートの方にお店のことを考えてもらって、頑張って取り組んでもらうことが大切だと思っています。店の売上げが、お給料になっていますから、みんなが幸せになるためにもそのことが大事なんです。
1年目は日専連の青年会のメンバーが中心になっていましたが、2年目からは従業員の方々に運営委員に入っていただくようにしました。そして3年目は、従業員の方にリーダーになっていただくようにして、従業員の方とも一緒に逸品をつくっていく雰囲気にしていきたいと考えています。
1年を通して逸品を決める作業をしていくので、どこかでモチベーションが下がるときもあるんです。モチベーションを保って運営するのは非常に難しいので、いろんな地域の逸品を参考にしたり、自分たちで工夫したりして頑張っていきたいと思います。
祷 小倉は本当にイベントがたくさんあるんです。それを商店主が、必死に汗をかいてやっています。そのためお店をホッタラカシにしているのが実情です。
ただ、逸品運動は違います。お店のことを深く考えることができます。勉強会でいろんな方からたくさん意見をいただきますから、ある意味、客観的に自店を見ることができるんです。「接客は大丈夫か、エリアマネジメントを考えてやっているか、CS(顧客サービス)はできているか、ディスプレイは...」というように、いろんなことを自分に問いかけるようなりました。また、個店の魅力を高めるためには、逸品(商品)のほかに、店主(お店の人)の人となりや技(技術)をPRしていきたいと考えています。
また、逸品運動では実行委員会を組織していますが、若手中心で中核になる実行委員メンバーを選びました。部会は全員参加で進めるようにしています。
太田 任意で集まっている方を引っ張っていくのはとても大変なことです。強制的に集められた人たちではないし、逸品運動はやったからといってすぐに効果が出るものでもないので、その点でご苦労されていると思います。
大変だったこと、問題点など
太田 取り組んでいく過程で、先ほどマンネリ化などで苦労された話がありましたが、ご苦労されたことなどについてお話しいただけますでしょうか。
伊香 最初の年は35店舗、翌年は50店舗、今年は53店舗...。数字的に見ると順調ですが、さすがにこの不況で、入れ替わりも多いです。けれど、逸品運動をもとにした個店の踏ん張りと「逸品つながり」で声かけをし合って多くの参加店をキープしています。
また、都合で会議に出られないことが続くと、出づらくなってやめようという気分になりがちです。でもそのお店は、逸品運動自体が続けられなくなっているのではないので、そんな時は逸品選びのヒントにしてもらう意味も含めて、メンバーで出張して逸品探しレポートを書いたりする、お店回りツアーならぬお「店回り研究会」なども行なっています。
山内 最初の年は24店舗でしたが、2年目は20店舗に減りました。3年目は募集中なので、どれくらい集まるかは分かりません。ただ、核になっている店舗は残っています。なんとか、気持ちが一緒になれるメンバーを1店でも多く集めたいですね。お客さまからの評判は良いんですから(笑)。
3年目に入って行政が私たちの活動に興味を示してくれているので、補助金をもらうつもりはありませんが、イベントやPRなどで十日町個店活性化勉強会 山内直道会行政とタイアップすることも考えていきたいですね。
祷 昨年、参加されたお店のうち、5店が抜けて、新たに4店のお店が加わって、現在は31店舗で行っています。商店街中心に4団体で構成しているので、お店の数は200店舗くらいあるのですが、なかなかご参加いただけないのが実情です(理由はさまざまですが...)。今後は、近隣のほかの商店街の方にも声をかけて参加を募っていきたいと思っています。
問題点は、参加者の方が勉強会に慣れていないため、勉強会に出てくることに苦手意識を持っていることです(笑)。そこから何とか脱却したいと考えています。
あと、実行委員会を若手で構成したため、諸先輩方とのコミュニケーションに初めのころはとまどいましたね(笑)。若手が育たない商店街はこれからは生き残れないと思いますので、現在もコミュニケーションを含めて色々なことを勉強中です。
今後の展望・豊富 アドバイスなど
伊香 逸品にしたい商品が初めての取り組みジャンルで、仕入れてもさばききれるか不安で踏み切れない。例えばそこに「逸品つながり」が生きて、取引先の拡大に繋がり、結果、さらに大きなチャンスに膨らんだ例もあります。
こうした、これまでの商店街の関係ではありえなかったプラス面が生まれ、この運動によって絆が強くなったし、これからも良いことが生まれていくと思います。
それから、ツアーに参加したお客さまの喜びの声から、少子高齢社会にとって、いろんなものの集合体である地域資源としての商店街の存在は大事だと強く思うようになりました。1番大切なのは人のつながり・絆です。これからもさまざまな「逸品つながり」で協力していきたいですね。
山内 3年目を迎え、「自分の店を良くしよう」という気持ちからブレないようにして、みんなで考えて、いろいろな活動をして、それを続けてどんどんレベルアップしていきたいですね(笑)。
街をいくら良くしても、店が良くならなければ人は絶対に来ないので、まずは店を良くすることが先にありきだということを、逸品運動を通じて学びました。また、「逸品」が売れることが大事ではなく、逸品を考えることによって、店を良くしていくことが大事であるということを教えられました。
人とのつながりの大切さは、この逸品運動をとおして非常に強く感じました。今までは、店主同士のつながりだけだったのが、従業員にもその輪が広がりました。ツアーに参加してくれたお客さまとの絆もできました。逸品は街の活性化の切り札だと思っています。
祷 今後の展望(野望)は、小倉で行っている「小倉逸品屋フェア」を、小倉だけでなく、旧5市すべてで行ってもらうことです。そして、その中から商品をセレクトして、「北九州逸品屋フェア」を開催したいと思います。
2011年3月には、九州新幹線の全区間(鹿児島から福岡)が開通します。また、博多駅の駅ビルには阪急デパートが出店してきます。北九州で商売する環境はさらに厳しさを増します。
無い物ねだりの北九州人は、福岡には一流のモノ(福岡ドームや国立博物館等)がたくさんあり、その点で北九州は負けているとよく言います。でも、努力して磨きをかけていけば一流に負けない光を出せると思います。商売に置き換えても、その通りだと思います。そうして丹念に磨き上げたモノ、それを"天の川"のように集めて、輝けるようにしたいですね。それが「逸品屋フェア」の基本コンセプトではないでしょうか(笑)。
みんなでやれば、知恵も出てきて希望が持てますからね。そのような感じでとらえて、これからも逸品運動に取り組んでいきたいと思っています。
太田 逸品の旗を掲げている店舗は、どこも丁寧に対応して説明をしていただけると思うので、機会があれば青森、十日町、小倉の逸品に足を運んでいただければと思います。
次号では、逸品運動のまとめとして、私の方から執筆させていただきます。
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