機関誌『専門店』ハイライト
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店人いま 239
ブルーオーシャンの中を
ひたすら進み続ける
個性あふれるセレクトショップ
鈴木宏宜氏 ㈲セザーヌ(仙台会)
聞き手 連盟広報部 宇田弘
東北一の賑わいを見せる仙台。2008年には駅前に仙台パルコ、S―PALが新しく出店し、従来からある駅前大型店とともにペデストリアンデッキで結ばれた。また郊外には大型アウトレットモール二店が出店し、駅前と郊外の両方で、県内外から多くの買い物客を引き込んでいる。
新しい商業施設が次々とつくられる商業激戦区仙台で、ブルーオーシャン(静かな青い海=競争がない)の中を進み続けるセレクトショップを取材した。
今と同じ場所に
大正の初期に創業
●創業はいつごろですか。
明治元年ですから創業して141年になります。業態の変換はありましたが、この場所(クリスロード商店街)でずっとやってきまして、私で5代目です。
●業態変換されたということですが、もとは何屋さんだったんですか。
鈴木 鰻割烹の店です。その当時の写真もありますし、大正時代の仙台市の地図にも「丸金」という店名で載っています。
●そこからなぜ業態変換されたんですか。
鈴木 戦争が始まる前に私の祖父の代でもう鰻割烹はやめちゃったんです。殺生がいやになったというのがその理由だと聞いています。儲けていたようですが、その後、小間物屋をしたり履物屋をしたりして、26年前の11月に、今のようなセレクトショップになりました。
●その当時のクリスロード商店街はどんな感じだったんですか。
鈴木 26年前からここがメインストリートでしたね。仙台駅からアーケードが真っすぐにきて、一番町でT字型になるんですが、そのT字路に6つの商店街があるんです。
駅に近いところから名掛丁商店街、次がクリスロードで、3つ目がおおまち、そしてサンモール一番町、一番町一番街、一番町四丁目商店街で、ここを人が回遊しています。比較的新しい駅前商店街振興組合もありますが、大型店ばかりですね。
●商店街の人通りは昔と比べていかがですか。
鈴木 昔に比べれば減りましたね。それでもほかの地域に比べると、恵まれていると思います。今、通行量が市内で一番多いのは、このクリスロードなんです。1日平均、5万人くらいは通りますね。ただ、街なかに出てくる客層が変わってきています。最近、高速バスを使って東北六県の人がよく来られるんです。
●クリスロードの通行量が一番多いというのは何か理由があるんですか。
鈴木 駅前地区と一番町地区を結ぶアクセスライン上にあるからだと思います。
●特にクリスロードは個性的なお店が目につきました。
鈴木 通りからちょっと外れたところにも、面白いお店がけっこう隠れているんですよ。まだまだ開発されていない部分もあって楽しいですよ。
●お客さまはワクワクしますね。
鈴木 うちの社長は商店街の理事長だけでなく、全国の商店街振興組合の副理事長もやっています。東北の代表なんですが、その社長が「従来は、商店街を線でしか考えていなかったものだが、今は面で考えるべきだ」と申しまして、通りを含めて一区画という「面」で魅力を出していこうとしているんです。
値ごろでステキで
可愛くて
●こちらのお店は入り口からして個性的な感じがしますが、26年前に始められたときからそういうコンセプトだったんですか。
鈴木 最初はバッグだけだったんですが、ほかにもバッグ屋さんはありますから、セレクトショップにしました。26年ほど前はビームスやシップスなどが波に乗り始めた時期で、その波にこちらも知らずに乗っていたということです。
●お客さまの層はどういう感じですか。
鈴木 年齢層は高いですね。マーケットは40代から上の女性に絞っています。
●問屋さんは介していないのですか。
鈴木 問屋さんから仕入れることもありますし、直接の場合もあります。商品に合わせていろいろです。うちのお客さまは東北6県から来てくださっていて、中には東京にお住まいで、八戸から東京に帰るのにわざわざ途中下車して来てくださるお客さまもいらっしゃるんです。そういう方々に支えられているので、来てくださった方に楽しんでいただけるような店づくりを心がけています。
「値ごろでステキで可愛くて」というコンセプトで、ここは何屋さんなんだろうって感じで、既存のバッグ屋さんとは違う切り口の店としてこだわっています。
●今の売れ筋はどういうものですか。
鈴木 店頭にあるマフラーが今は売れていますね。安いものは1050円です。フランス製マフラーも通販で3150円で売っているものが、うちは2100円で販売しています。去年から扱っているんですが、某デパートでは6000円しているらしいです。
うちはセールを一切やらないんですが、その代わりに値段を抑えていますから、目利きの人が見ればこれは赤札じゃないけれど安いと分かってもらえるはずなんです。そうやって26年間積み上げてきたので、分かって来てくださるお客さまは多いと思います。
バッグに関しては、どこでもセールをやっているので、どこともかぶらない商品を扱っています。
商業激戦区において
ライバル店は存在しない
●キャッチの書き方や陳列も、何があるんだろうと探したくなるようなワクワクする店づくりですね。
鈴木 ありがとうございます。ディスプレイは私がメインで、母と2人で、ああしよう、こうしようと考えながらやっています。
●商品がすごく多いので雑然となりがちですが、スッキリとしていて掃除も行き届いていますね。
鈴木 そうですね。店に立っていることが多いので、動かない商品を常に発見しては移してみたり、デッドスペースをわざと空けてみたり、毎日、考えています。掃除も社員がすぐにやりますね。
●お客さまを飽きさせない店づくりですね。
鈴木 お客さまには「この前来たときとは違う感じだ」と思ってもらえるよう、気を使っています。
●お店は何人で回しているのですか。
鈴木 私と両親と正社員が3人、パート社員が1人です。
●売れ行きはどうですか。
鈴木 選挙の前後、7月、8月、9月はあまりよくなかったですね。選挙が終わってよくなるのかなと思っていましたが...。
●それって極端に悪いわけではないってことですよね。
鈴木 いえ、負け惜しみですよ。昨年の9月、10月の数字は非常によかったんですが、それに比べると落ち込みの幅が大きくて...。でも、上がったり下がったりはしょうがないですね。
うちは売り上げが下がったからといって、すぐに安くしたりしません。難しいですが、商品を回転させることにエネルギーを使っています。価格競争では大手にかなわないですからね。それよりも、うちの特性を生かした接客や商品構成で勝負しています。
●接客で特に気を使われていることはありますか。
鈴木 うちはノルマはありません。ノルマがあると一生懸命さが裏目に出てしまうでしょう。うちのお客さまはデパートの品揃えとは別のものを探しに来られるんです。だから接客のタイミングなど難しいことは言わずに、ただ「親切に売る」ということを心がけています。また、マニュアルにすると、それしかできなくなってしまうので臨機応変にやってもらっています。
●ライバル店はありますか。
鈴木 ライバルはありません。
●アウトレットが2つできましたが、その影響はどうですか。
鈴木 全くないですね。自分が行ってみて思ったんですが、アウトレットって意外と魅力がないですね。うちの場合は、藤崎や三越デパートから流れてくるお客さまが多いんです。デパートって街の顔ですから、デパートが元気だと街全体が盛り上がるんですよ。もっと吸引力を上げてもらえるとありがたいのですが...。
アウトレットはイオン、ヨーカドーなどのショッピングセンターとあまり変わらないですから、お客さまは飽きてきていると思います。話に聞くと子ども連れの方が暇つぶしに行くみたいですね。
●支店を出すお考えはないのですか。
鈴木 友人やお客さまからも、東京などに支店を出さないのとかって言われるんですが、支店を出すと目が行き届かなくなりますし、商品の供給も追いつかなくなってクオリティーが下がると思うんです。このくらいの規模が目の行き届く範囲で、しかも楽しくやっていられるし、個性も出せるので...。
●固定客だけでなく、流れてくるお客さまも多いですか。
鈴木 こういう場所柄ですから、フリーのお客さまも結構いらっしゃいます。固定客を抱えてしまうとお客さまに迎合してしまい、店のコンセプトがずれてしまうんです。お客さまに引きずられない程度に、固定客も大切にしつつ、次々と新しいお客さまを獲得する努力をしています。
●そのための仕掛けは?
鈴木 うちは広告やDMは一切出していません。商店街のホームページには載せてもらっていますが、うちだけのものはつくっていません。
全国青年会会議が熊本で開催されたときにディスカッションがあって、まとめ役をされた九州大学の先生が、「コンピューターを導入するのはかまわないけれど、それに一生懸命になって肝心のことを忘れていませんか?」と言われたんです。パソコンに打ち込むことが仕事になってしまって、売るほうがおろそかになったら意味がありませんからね。
世間ではそれで成功している方もいますが、その方は頭がよく回って、売れるタイミングをつかめたからで、ほとんどの方はなかなかうまくいってないと思います。そういうイメージだけを追っていくのはよくないと思うんです。
●新しいお客さんを呼び込むのは「店頭」でということですね。
鈴木 ショーウインドウですね。ディスプレイ業者からやらせてほしいというお話が来ますが、私は「自分でやるよ」と断っています。外注しても、おそらく私が満足するようなものはできないと思うんです。私はちゃんと勉強したわけではありませんが、その時々の状況に応じて変えています。
青年会の繋がりを
大事にしていきたい
●今は専務さんということですが、おいくつですか。
鈴木 41歳です。
●いつからお店に立っていらっしゃるんですか。
小さいころから、この店を継ぐことは言われてきましたので、その心づもりではいました。そのための修行というよりは、経験を積むと言いますか、他人の釜の飯を食べるというような感じでしたね。
帰ってきた当初は、私が経験した店のやり方とあまりにもギャップがあって、何のためによそで働いてきたんだろうって思いました。いろんな葛藤はありましたが、それはのみ込んで、うまく消化してきました。どこにもよい面、悪い面がありますからね。
私には日専連の青年会などの横のつながりがありましたので、いろんな考え方を学んだり、吸収したりできました。大きい会社を経営している方にも悩みはあるし、小さいところでもそれなりに大変だって話はありますが、それは輪の中に入らないと聞こえてこないでしょう。
●日専連の青年会に入ってどのくらいたちますか。
鈴木 13年になります。
●勉強になっていますか。
鈴木 いろいろな話が聞けますので、大変勉強になります。会社のオーナーとしての考え方を意気に感じたり、失敗談が役に立ったりもします。
その時々で当然、壁にぶち当たるとは思いますが、私はその前で立ち尽くすのではなくて、違う考えがあるかもしれないって思うタイプなんですよ。明日は明日の風が吹くというか、気楽な面がないと苦しいですからね。自分の気持ちに余裕があるほうが、何か問題があったとしても対処できるでしょう。堅苦しく考えちゃうと受け身がとれなくなりますからね。
「おやっ?」と思わせる
ことが大好き
●基本的に商売がお好きでいらっしゃるんでしょうね。
鈴木 商売以外のことは考えられなかったですね。ほかで何か生かせるようなものが自分にはないんですよ。
私も母もみんなと同じじゃ楽しくないんです。あんまりはずしてしまうとおかしくなりますが、みんなを「おやっ?」と思わせるような感じが好きなんですね。その感性が仕入れ商品にも反映していると思います。マニアックな感じではなくて、万人ウケしつつ個性的にという感じです。
うちの商品構成をこっそり見に来る方もいるらしくて、うちを参考にしたようなお店もあるんですよ。それはそれでありがたいことですが、うちと同じにはなりませんね。
●お店が継続してそれなりの売り上げを保っている理由は、お店が少しずつ変化していて、お客さまがこの変化を楽しみにして来店されるからですね。
鈴木 お客さまは、買いに来るというより探しに来るという感じですね。バッグなどにも賞味期限はありますので、どこで見極めるかうまく判断しないといけません。
●流行は取り入れてらっしゃるんですか。
鈴木 ごく一部に取り入れています。どちらかというと、流行よりは普遍的なもので選んでいます。流行に偏っちゃうと、お客さまの層が変わってきますからね。たまたまそのときの商品構成に流行がちょっと見えるという程度だと思います。流行からあまりにも外れると買ってもらえませんし...。
●今後のお店の展望や新しいことへのチャレンジは考えていらっしゃいますか。
鈴木 そういう気負いは、あまりありません。こういうものはひらめきだと思うので、やっていて、あっ、これいいんじゃないかなと思ったら、何かやるかもしれません。
●感性を大事にということですね。本日はお忙しいところありがとうございました。
㈲セザーヌ
〒980―0021
仙台市青葉区中央2丁目3―20
電話 022―222―8249
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