機関誌『専門店』ハイライト
ホーム>機関誌『専門店』ハイライト
第1回・日専連全国会議 個店対策討論会
手の届く店づくりのために
経済危機が叫ばれている昨今、自店の経営理念を掲げ、常に戦略をたてて果敢にチャレンジし、地域生活者から必要とされ続けているお店はどこの地域にも少なからず存在する。規模の大小ではなく、うちのお店は地域生活者に対して「何ができるか」「何をすべきか」をしっかりととらえていけば、活路は開けるはずである。この討論会では、業種の異なる3名の方々に自店の経営理念を中心にお話しいただいた。
コーディネーター(社)流通問題研究協会 会長 三浦 功氏
パネラー(株)生活の木 代表取締役社長 重永 忠氏
(株)私の部屋リビング 代表取締役社長 前川睦夫氏
(協)日専連仙台 理事長 山口哲男氏
三浦 私は、1つのことに打ち込み、ほかの店には真似のできない特徴を出し、お客さまに満足をお届けし続ける店を専門店と定義しています。そして今こそ、発見と会話のある商売を取り戻し、最新の技術を使い、新しいことに挑戦する時期にきていると思います。街を大きくする必要はありません。
一軒一軒のお店を充実させて、内容の濃い街にしていくことが大切なんです。
そのような問題意識を持って各地で実際に商売をやっておられるのが、今日のパネラーの方々でございます。
資源巡回型ビジネス
重永 私は商人として3代目を継いでおります。創業者である祖父は、原宿の表参道に重永写真館という小さな店をオープンいたしました。2代目の私の父は写真館を継がずに、新たに洋食器、テーブルウエアのデザインと製造販売を始めました。私も高校3年から父の商売を手伝っておりましたが、あるとき父がアメリカからお土産として持ち帰りましたハーブに私は注目して、今の本業であるハーブとアロマテラピーの事業をスタートさせました。
3人3様、それぞれが違うことに情熱を傾けてきたというのが、私どもの3代の歴史です。
ハーブとアロマテラピーの原材料は、世界中から調達し、工場を持って開発・製造から販売、卸しもやっております。また、全国18カ所でハーブライフカレッジというスクールを経営しております。そのほか、産地にお客さまをお連れして原材料のルーツを訪ねる旅を楽しんでいただく旅行業もやっております。
30年間コツコツと展開してまいりまして、この10月で100店舗となり、社員も550名になりました。私は規模を誇りたいのではありません。誇りたいのはこの550人が皆、ハーブやアロマテラピーが大好きだということなんです。そして好きなことについては勉強もします。私どもの学校に仕事のかたわら通ったり、アロマテラピーに関する資格を取得したりします。
つまり知識を自分の中だけに溜め込むのではなく、仕事の中で力として発揮し、楽しくお客さまに提供する、そんなプラットホームをつくるのが私の仕事ではないかと考え、経営者として一番に取り組んでおります。毎日、何らかの社員研修が社内で行われ、私も自ら研修に携わっております。
われわれの仕事は世界各国の植物という自然の恵みを使っております。石油でも何でもそうですが、資源は使えばいずれは枯渇してしまいます。そこでわれわれは使ったと同時に、使った以上に植樹をしております。21世紀は使えば使うほど資源が増えるという循環型ビジネスでなければいけないと強く感じております。
もう1つ、循環型社会を実現しようというメッセージを世の中に送りたいがために、われわれの企業から出る紙のゴミをすべて圧縮して、大王製紙さんに引き取って再生してもらい、それで配送用カートン、段ボールをつくってもらって活用しております。また、うちはボトルを使った商品が多いのですが、お客さまが使い終わったボトルは店頭にて全て回収して再利用しております。
さらにレストランも経営しておりまして、そこからは生ゴミが出ますが、コンポストを使って有機肥料に変え、埼玉県で経営しておりますハーブガーデンで肥料として再利用しております。
現在、風力発電やバイオマス発電など、自然エネルギーによる電気を買って工場を稼働させたりしておりますが、いずれは工場の屋根にソーラーパネルを設置したり、風力も使って自然エネルギーによる自家発電で工場を稼働させたいとも考えております。
生活提案型ビジネス
前川 私の父が1972年、『私の部屋』という雑誌を刊行しました。実は私どもの会社は37年前、この雑誌から始まりました。紙というマスメディアがスタートして、それに続いてリアルなお店ができました。その後、軽いノリで、雑誌に載っている部屋や生活用品が実際に手に取って見られるようなお店をつくってみようと思いつきました。つまり紙メディアとしての雑誌とリアル店舗という二つのルートを使ってツーウェイで読者とコミュニケーションを深めようということで始まったわけです。
商売の中身ですが、一言で言えば、インテリア、生活用品の店です。小さいものはポストカードや文房具などから、大きいものはベッド、カップボードなどの家具まで、さまざまな生活雑貨が約30坪の店内に置いてあります。私は編集型店舗と呼んでおります。
当時、ファッションからインテリアへという流れがありました。そこで身に着けて外に出掛けるよりも、家にいてゆったりと過ごすことを好む人たちにターゲットを絞りました。現在、「私の部屋」というお店はフランチャイズ店も含め30店舗強ございます。
もう1つ、同じころにパリで生まれた生活用品店「キャトル・セゾン」との提携を22年前に始めました。さらに六本木ヒルズに「ミュゼ・イマジネール」という、和でも洋でもない実験店を出しておりまして、全部で53店舗ございます。
「私の部屋」は日本、「キャトル・セゾン」はフランスの生活と文化をベースにしております。そしてこの2つはライバルなんです。自由が丘、札幌、名古屋、大阪などではお店が隣り合っていまして、毎日、どっちの売り上げが良かったか、店長以下みんなが良きライバルとなって商売をしております。
また、この商売は景気の良いときはあまり売り上げが伸びなくて、景気が悪く、皆さん家にいる時間が長くなると売り上げが伸びます。冬の長い北欧でインテリアが発展したように、われわれも外で贅沢をすることが流行っている時期はあまり良い業績ではないのですが、お金もないから家にいようという時期に店舗数が増えたりしております。言わば不況型の事業ですね。
私どもには53の店舗がありますが、人口5000人の小さな町にも、新宿や銀座など大きな街にも出店しております。雑誌の『私の部屋』が全国で読まれていたということもあって、その街に見合った店をその街の人たちと共につくろうという考え方でやってまいりました。
ですから店長の権限がすごく強くなっています。店長が売りたくないものは仕入れません。そして地元の作家たちとよくイベントをしております。どんな土地にも素晴らしい生活文化があり、器があり、食べ物があります。つまり創り手と使い手の間をつなぐのが店の役割であると考え、それによって店の特徴を出しております。
それから役員やリーダー職、管理職の人は、常に自分はこうしたい、自分はこんな店にしたい、自分の夢はこれであるということを、みんなに伝えなければいけません。ここが共有されないと向かうべき方向が合いませんので、どんなに良い仕事をしてもお客さまに店の提案が伝わりません。
3番目は社員全員を依存型から自立型にしようと考えております。ここで言う依存型社員とは「それは自分の責任ではありません」「それは私の仕事ではありません」などと言う人たちのことです。また新しいアイデアや人と違う意見を言わない人たちのことです。「去年やったから今年もこれをやろう」、あるいは「上司から言われたからやろう」というような考えで動く社員がいる店はつまらないです。
最高の品質で社会貢献
山口 私は自転車専門店として日専連に加盟しています。多店舗化は考えておりません。1店でもその地域のなかで自分のやり方、またはやらなければいけないことをじっくりと構えて取り組んでいる、零細で小さなお店の代表だと思って私の話を聞いてください。
私は父親の跡を継いだ2代目でございます。私も多店舗化を考えた時期がありますが、やめました。私の理想とする商人道に合うような社員が現れなかったんです。というより、私が思っているようにお客さまを第一とする店を、どの社員ならつくれるのかと考えると、店を任せることを躊躇してしまって、私が人を育てられなかったんだと思います。それで1店舗主義でやってまいりました。
実は私の店は「あそこは安くないけれど行ってごらん」と言われるそうです。現在、自転車は安くして売るのが一般的ですが、私どもでは1円も引きません。その代わりに、お客さまが納得されるコトを提供しております。それはお客さまが来てくださったら、いつでもちゃんとお話をするということです。自転車とはあまり関係のない話をすることもあります。今では顔を見に来た、話を聞きに来たというお客さまが多くて、とてもうれしく思っております。
自分の店のことだけをやっていればいいんですが、今地元の組合を通して「自転車繁盛塾」というものを始めて、業界指導などの話をして6~7年になります。そんな話をしているうちに自転車産業振興協会や全国の自転車の協同組合などから、せっかくだからほかの県でも話をしてくれと頼まれまして、他県に行くことも増えてきました。自転車業界を元気にして、今の時代にフィットさせて、ここの自転車屋さんはいいねと言われるような店が、地元だけでなく全国に広がってほしいと思っております。これが私の違った意味での多店舗化かもしれません。
今、街の真ん中に自転車店がなくなってきました。自転車を利用している方はとても不便を感じています。これは自転車業界にとって、ものすごいマイナスです。使い続けたものをちゃんとフォローして差し上げることのできない業界なんてまったく情けないです。そこで街なかに2~3坪の小さな自転車の修理屋をいっぱいつくりたいと思っています。仕事のない高齢者や、アルバイトをしたい学生などに最低限の修理方法を教えて、自転車の修理専門の店をいっぱい開きたいと思っております。
今、文科省ではキャリア教育といって、子どもたちに実体験を通して豊かな社会人になってもらおうという柱を立てております。私も仙台のキャリア教育の真ん中に近いところに座らせていただいておりまして、その体験のための事前学習で、このところ週に1度は学校に行ってお話をしています。
話の内容ですが、良い消費者になろうねというものではなくて、われわれ商人はどういうことを考えて、どういう仕事をしているのかを話しています。テーマにしているのは「最高の品質で社会貢献」という私の店の社是でございます。これは先のお2方のお話とも重複するのですが、店と人とサービスの3つが品質の中に折り込まれたとき、その商品は最高の品質になるという説明をします。30~40分きちんとお話しすると小学生でもちゃんと理解できるんです。
多店舗展開の考え方
三浦 改めて考えてみますと、重永さんが消費者に対して提供されているのは癒し、心ですね。これは今までの商売にはなかったターゲットです。また前川さんが提供されているのは、世の中が変化し、ガサガサしているとき、時間を大事にするために自分の部屋をどうつくるかのお手伝いです。多店舗化と聞くと、どんどん同じような多店舗展開の考え方店をつくればよいと思うかもしれませんが、それは違うんですね。専門店とは人がそこにいて、心がそこにあって、お客さまとつながっている店のことです。それがないと大型スーパーやGMチェーン店と同じになってしまいます。
そういう話をもっと絞って、山口さんは自分のお店がお客さまの役に立つ拠点だとお考えになったわけです。これはスゴイことです。お店=フィロソフィー(哲学)だと強く感じました。
山口 多店舗展開には、私が思っていることを理解して、私と同じように商売してもらうための人材が必要になりますが、私は自信がなくてできませんでした。お二人は見事にやってらっしゃいます。そこについて、ぜひ教えていただきたいと思います。
前川 私は逆に、なぜ多店舗化しないのかをお聞きしたいと思っておりました。私どもの店は店員もお客さまもほとんどが女性なんです。出店するとき新しい店の店長に「ここはあなたの家ですよ」って話をします。ただ、この家は新築できれいだけれど冷たい感じがします。つまり生活感がありません。それを毎日ちょっとずつ手を加えて、自分が心地よく過ごせる家にしてくださいと言います。
それから、家というのは家族がいて、友だちが遊びにくる場所です。店舗スタッフは自分の家族よりも長く一緒に過ごす人たちです。ですから仕事の話だけでなく、お互いをよく理解し合って頑張れるような関係をつくろうとも話します。
そして売上が悪いと家はなくなる...(笑)ということも言います。そんな話をすると、みんな一生懸命にやってくれます。お店の損益は家計と同じです。家を建てたらローンは返さなければなりませんからね...。
重永 私は山口さんとは逆に店をどんどん出していこうというポリシーを持っています。その反面、人が育った分だけしか企業は育たないとも思っています。人が育っていないのに、店だけ増やしてもダメです。お店を増やす理由は、社会貢献型企業にしていきたいと考えているんですが、社会貢献の対象が消費者、生活者であることはもちろん、同時にその生活者の働く場、活躍する場をつくることもまた社会貢献であると考えているからです。
もう1つ人の循環も大事にしたいと思っています。うちのお客さんだった人が、今まで「生活の木」ですごく親切にしてもらって悩みが解消したから、今度は解消してあげる立場になりたいということで社員に応募されることが多いんですね。活躍し始めると、販売スタッフだけではなくて、教室で講師としても腕をふるいたいと、教える側に回ったりもしますし、退職しても講師として登録している方もいます。
要するに人がどんどん循環しているんです。ですから店もスクールもどんどん増やしています。
山口 100パーセント共感いたしました。多店舗化で私が躊躇することはたった1つなんです。簡単に言いますと、自転車はとても楽しいですが、危険なものでもあるんですね。例えば車の場合は車検がありますし、運転資格もあって、きちんとした制度のなかで安全が保たれています。またメーカーが責任を持つ部分もはっきりしています。しかし自転車は、危険に対して100%のサポートができておりません。私はこのサポートがきちんとできないのであれば、店はやるべきではないと考えています。
新しく店をオープンして、誰かにそれを任せるというとき、パンク修理1つとっても、私と同じ感覚で品質を保とうとする意識を持っているのかどうか、私は自信がなかったんですね。育て方が悪いのか、なかなかうまくいかないんです。自分の息子すらまだまだ跡を継ぐところまでは育っておりません。跡を継いでもらったら、私はほかに好きなことをするんですが...(笑)。
お2人がおっしゃったお客さまとの共感の場という点では、私がいつも持っている日専連信条に謳われていることとまったく同じです。私は商人の原点はこれなんだと再認識いたしました。
三浦 お2人は、店長をどう育てるか、それも知識で育てるのではなく、やらせてみて育てる、あるいは教え合いをさせて育てるということにお金をかけています。それほど裕福な企業には思えませんが、本当にこの分野にはお金をかけていますね。感心しています。
百貨店に新しい価値を植え込む
重永 先月、新宿髙島屋に店を出しました。ど真ん中の良い場所をもらいました。そこではモノは売りません。百貨店の人も売り上げはなくてもいいと言われたんです。百貨店から売り上げはいいから出店してくれと言われたのは初めてです。新宿髙島屋の店長と私どもの会社の思いが一致した店舗なんですが、社会貢献していることをアピールする場としてやってほしいと言われたんです。「海外で植樹したり、アフリカで石けんづくりの産業を成り立たせたり、そういう途上国貢献も含めて、どんどんこの場でアピールして、それを髙島屋も一緒に応援しているという見せ方ができるような店づくりにしてください」という依頼だったんです。それでソーシャルファームショップというものをつくりました。
これからの百貨店には、モノを売るだけではない活用方法があると思います。百貨店側も意識革命ができつつあるようですので、さまざまなコトをアピールする場として活用し、われわれの得意技を発揮したいと考えています。
挑戦すべきは百貨店に新しい価値を植え込むことです。その挑戦を誰もやらないのなら、俺たちがやっちゃおうぜ、百貨店を変えるぐらいのパワーになりたい、そんな意気込みで全社員があたっています。
前川 百貨店関連でお話ししたかったのはヒット商品の考え方についてです。今年はお弁当グッズが売れているらしいですが、百貨店に出店しているうちの店では、実は蒸し鍋が売れているんです。あまり料理をされない方には分からないと思いますが、トルコやイスラムのほうの鍋で、蓋が煙突状になっていて穴があいているんです。その鍋で野菜などを蒸して食べると大変美味しいんですね。それってお店から提案しなければ分からないことです。
百貨店のようなところでは仕組みが堅くなっていて、だれかが気付いても企業全体の意識を変えられないのでないかと思います。
もう1つネットに関してですが、重永さんの「生活の木」はインターネットの売上高が非常に高いんですよね。売上の何パーセントぐらいですか。
重永 年間65億円の売り上げのうち5億円ぐらいがネットです。伸びはメチャクチャ高いです。ただ、売れるものが店頭とはまったく違います。
そうですね。店頭には置かないものがネットで売れちゃうんです。それは三浦先生がコト商品と呼んでいらっしゃるものです。
今、石けんを作るセットが売れています。石けんは家庭でも簡単につくれるので、僕らは手づくり石けんの提案をネットでしました。それにはいろいろな機材がいるんです。でも実店舗ではスペースを取りますのでこの商品は並べられません。
ネットでは何を売りたいか、仕掛ける側がはっきりさせたほうがいいですね。
哲学とロマンを持つ
三浦 私は経営や戦略には革新が必要だと思っています。その際、消費者の心に商いを合わせるのではなくて、商業者自身が哲学を持つ、ロマンが大切です。外から見たらワガママでもいいんです。今日のお3方は目的、目標にまったくブレがありません。前年比に対する目標売上などは、一言も出ませんでした。また、商売ありきではなく、社会貢献、お役に立つということが先にあるんですね。
山口さんの話なんか聞きようによってはずいぶんワガママな話ですよ。だけどそのワガママが素晴らしいじゃないですか。山口さんのように、何か1つ貫くものを持ちましょう。山口さんは、自転車屋という商売のなかで、世の中の役に立つことをしようと考えました。まさに社会貢献が先にあって、そのために今の商売をやっているということです。また、山口さんは「消費を教える」とズバリ言いました。素晴らしいじゃないですか。昔の商店主は地域の躾しつけ役でした。躾はすごく大事なことです。地域のなかで躾の大事さを発信できるような店こそが、この時代に求められていると思います。山口さんは1軒の店でとことんやっていらっしゃいます。
もう1つ大事なことは人づくり、心づくりだということでしょう。人づくりにはいろいろな場面があります。社員、店長を育て上げるというのは最高の人づくりですが、オペレーション上の問題としては多店舗化云々がありました。
前川さんは「生活の木」のミッション、スピリットをしっかり持ちながら、オーナー、店長、スタッフが志を一つにして、自分が愛する地域に独自の生活提案をしてきました。
重永さんは、社会貢献という立場で人づくりを行い、多店舗展開をしています。そして、とうとう髙島屋に教えてやろうとなさっているじゃないですか。それはとてもうれしいことです。
日専連さんには素晴らしいお店がたくさんございます。経営の大小ではなく、役割を明確にするという方向で新しい日専連が動いていけば、全国の専門店が日専連をお手本にするでしょう。
皆さん、ご清聴ありがとうございました。
![]()

