機関誌『専門店』ハイライト
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世界の専門店拝見 こんな店・あんな店 144
母親感覚で作った子ども部屋の
ユニークな家具が大当たりし
家具全般、室内装飾と多角経営へ発展
乳幼児用家具類・ベビー用品専門店「ウベ・テー・ウベ」マドリード
インタビュアー 山田照子
高級住宅地に構える
上品な雰囲気のお店
マドリード市内でも高級住宅地とされるサラマンカ地区。そのシンボルともいえるサラマンカ侯爵の銅像が立つサラマンカ広場のすぐ近くに、乳児用ベッドを始め、さまざまな乳幼児用品全般を扱っている専門店ウベ・テー・ウベがある。
ドアを開けて一歩中に入ると広々とした店内は全体がパステルトーンで統一され、どの製品にも洗練された上品さが漂い、「こんな環境で育てられた赤ちゃんはどんなにか幸せだろう」と思ってしまう。
店のオーナー、ピラール・デ・ラ・ベガさんは、とても日本人びいきだ。何年か前に日本人女性とスペイン人カメラマンのカップルが店内の撮影に来て、それがインテリアの雑誌に掲載された。直後に、その取材記事を見たという大勢の日本人が来店してくれたこともあったという。インタビューには二つ返事で応じてくださった。
子ども用のユニークな
家具が大当たり
●とても大きな店で、家具類が遠くからでも眺められ、ゆったりした気分でショッピングができますが、何平米ありますか?
ピラール 1階は新生児用から2~3歳児までのベビーベッドや付属の家具、洋服や靴、ぬいぐるみなどのベビー用品の小物類、2階は8歳くらいまでの子ども用のベッドや棚や机類、そして地下1階にはクッションやベッドカバー用の布地を置いていますので、全部で800平米あります。
●創業は何年ですか? そしてその動機は?
ピラール 1992年ですから17年前になります。
当時、私は8歳を頭に3人の幼い子どもを抱えながら家計をやりくりする専業主婦でした。そんなあるとき、子ども部屋用の家具を考案し、試作しました。
その家具は、上段がベッドで、下段も引き出すと、もう1つベッドが出てきて、その間の空間に2つの窓と、中央にドアがついた小さなお家を作りつけ、中には小さなソファーやテーブルも置き、壁には箱型の棚をいくつも付けておもちゃ箱にし、おままごとの道具も作り付けにしたものです。
そして横には、上段のベッドに行くための小さな階段も付けました。全部木製です。そうしたら子どもたちが大喜びで、1日中このお家の中にこもって遊ぶのです。
こんなに飽きずに遊ぶのなら、これを商品化して売ってみてはどうかと思いつき、さっそく小さな工房で作ってみました。
初めは、店を持たずダイレクトメールで注文を取っていました。当時主人は医療関係の研究所に勤めておりまして、高給取りのお医者さんの友人がたくさんいましたので、口コミで宣伝してもらったら、これが好調に売れたのです。
その家具は、とても丁寧に作ってあるので、あのころでも30万ペセタ(約30万円)はする高価なものでした。販売するにあたり、やはり実物を見てもらうほうがよく売れると思い、このすぐ近くのプリンシペ・デ・ベルガラ通りの半地下に小さな店舗を見つけ、主人の友人を出資者に誘い3人で始めました。もちろん、私が中心です。
●店の名前のウベ・テー・ウベはとてもユニークですが、その由来は?
ピラール 実に簡単です。主人とわたしの苗字がVega なのでイニシャルはV、友人の苗字がTelonなのでイニシャルはT、これらをつないでTを真ん中に入れて「VTV」にしました。
●なるほど。開店当時の状況はいかがでしたか?
ピラール 1992年といえば、スペインはフェリペ・ゴンサレスの社労党政権末期の時代で、今ほどではありませんが不況に見舞われて、経済状態は良くありませんでした。幸いあのころは、乳幼児用の家具や小物だけを売る専門店を誰も思いつかず、存在しなかったので、とても珍しかったのでしょう。
インテリア雑誌の代表者をいろいろ知っていたので、大々的に宣伝してもらったら、お客さまが来るわ来るわ、外まで溢れて行列を作るまでになりました。「肉屋やパン屋みたいに整理券を発行したらどうか」と冗談を言われるくらい大繁盛しました。
●ご主人はスタート当初から協力してくれたのですか?
ピラール 初めの5年間は、自分の仕事を続けながら協力してくれていましたが、いよいよ私一人で切り盛りするのは手一杯になりました。しかも、私は整理整頓が一切苦手で、書類でも何でも引き出しにしまい込んでそれっきりにしてしまうので、後で探すのが大変でした。
支払いも、売り上げたお金を即現金で払ってしまったので、すぐにお金が足りなくなってしまいました。「それは交渉して60日、90日後払いにするものだ」と教えたくれたのは主人でした。商売の基本をまるで知らずにスタートしてしまったのです。
見るに見かねたのでしょう。始めてから5年が経過したときに、自分の仕事をすべて辞めて、こちらの仕事に専念してくれました。何しろ主人は私と正反対で、管理能力が抜群にあり、アドミニストレーション(情報処理・管理)業務をすべて引き受けてくれました。それからの私は、新製品のアイデアを練ったり、プロモーションやセールスなど、外交に集中できるようになり、とても助かりました。
アイデアは膨らみ
多角経営へと拡大
●ご夫婦の性格の違いを、お互いが補うことで、良い結果が出たとういことですね。その後、ご商売の行方は?
ピラール とても小さな店なので、アイデアは膨らみ多角経営へと拡大すぐに手狭になってしまい、真向いに200平米の店が空いたので移転しました。商品も乳幼児用の家具に限らず、ベビー用の肌着、洋服や靴などの小物類、ぬいぐるみなどにも広げていきました。
赤ちゃん用オーデコロンも、VTVという自社ブランドで作りました。また、アイロンをかける前に洋服や肌着にシューッと吹き付けると、とても爽やかな良い香りが残る芳香スプレーも考案しました。これもよく売れています。それからベッドカバーやクッション、部屋に合わせたカーテンをつくるための生地も販売しました。
家具のほうも乳幼児用だけでは物足りなくなって、一般向けの寝室用一式、サロンのソファーや食堂の戸棚やテーブル、イス、洗面所の付属品、そして室内を飾るインテリアへと尽きることなく、アイデアは広がっていきました。そんなわけで、プリンシペ・デ・ベルガラ通りの店も手狭になったので、今ある800平米の店へ行き着きました。
●現在、何店舗あるのですか?
ピラール マドリード市内に2店、郊外に5店、バルセロナを中心としたカタルーニャ地方に4店、全部で11店あります。そしてマドリード郊外のアルコベンダスに大きな工場があり、従業員は全部で120人近くいます。
●家具類は特別注文にも応じるのですか?
ピラール はい、もちろんです。部屋の見取り図をいただいて、たとえばベッド類は子ども部屋の大きさに合わせて作れますし、子どもの成長に応じて大きく引き伸ばすこともできます。また、一人のときはベッドの下に収納用の引き出しを付けておき、もう一人子どもが増えたら、その部分を引き出せるベッドに付け替えることもできます。
子ども部屋はおもちゃがどんどん増えて収納には苦労しますが、今お客さまから一番多い注文は、ベッドの両脇から上部すべての壁のスペースに箱型の棚をいくつも取り付ける家具です。
●注文家具ということですから、高額になりませんか?
ピラール いいえ、10%から20%高いくらいです。
●売り上げのうち、注文の家具と既製の家具との割合は?
ピラール 注文の家具は、全体の約20%です。
クライアントは王室から
有名人・スターまで
●開店以来、好調にお客さまを獲得されていますが、その秘訣は?
ピラール いつも家具を使う側に立って、いかに使いやすく機能的で長持ちさせるかを考えています。たとえば家具類ではネジは使わず、すべてニカワを接着剤にして貼り付けています。ネジを使うと長い間に隙間ができて、ガタガタになりますから。
また、ベビーベッドの両側についている柵も、安いものですと柵を下ろすことができないか、片方しか下ろせません。わが社のベッドは、両側とも下まで降ろせるので、ベッドメイクにも赤ん坊を抱き上げるときにも楽です。
白雪姫に登場する七人の小人が寝そうな薄いグレーのかわいいベッドがありますが、これも成長に従って伸ばせるようになっています。それから双子用のベッドで、中央に板や透明のプラスチックをつけて仕切ってありますが、成長すればこの板をはずして一人用のベッドにして、その下から、もう一つベッドが引き出せるようになっています。
お値段は決して安くありませんが、ほかの店の同じものと比べても質では負けていません。ですから、一度お買い上げになったお客さまが大勢リピートしてくれます。
●家具の色はクリーム、べージュ、グレー、肌色とパステルトーンが多く、どれも上品で洗練された感じがしますが、家具の色にも流行はありますか?
ピラール 私はこうした中間色が好きですが、今の流行はホワイトでして、その上にラッカーを塗った艶があるものが喜ばれます。
●お客さまの層は?
ピラール この地区は高級住宅地なので、上層の方もいらっしゃいますが、インテリア雑誌にたくさんPRしていますので、中間層の方も遠くからはるばる訪ねてきてくれます。フェリペ王子、レティシア王女ご夫妻のお二人のお子さま(2歳と4歳の女の子)も、すべてこの店の家具を使ってくださっていますし、有名人やスターの間でも非常に評判がいいです。それから、テレビや映画の撮影用の小道具としても頼まれて貸し出しています。
●政府は少子化対策として、新生児に2500ユーロ(約40万円)のベビーチェック(小切手)をプレゼントしていますが、この店の売り上げにもプラスになっていますか?
ピラール 実はあまり潤っていません。何しろ保育園に預ければ1カ月1000ユーロ(約15万円)もかかりますから。でも少子化によって、プレゼント用品がよく売れます。赤ちゃんが一人生まれると、両親のそれぞれの親、あばさん・おじさん、それと友人など、大勢の方からたくさんのプレゼントが集まりますから。
この店にはセスタ・デ・べべ(ベビー用品の詰まったかご)に、お客さまの好みに応じて中身の品を入れ替えたりすることのできる商品もあります。そして、この素敵なかごに赤ちゃんの名前と生年月日を書き入れてお作りします。たとえばここにあるかごは、母親が持つ外出用の大型バッグ、ベビー服、犬や熊のぬいぐるみ、タオルやオーデコロンなどです。
●今生まれてくる赤ちゃんは、みんなに祝福され、こんなに素晴らしい品々に囲まれて本当に幸せですね。
ところで、これまでで一番苦労したことはどのようなことですか。
ピラール アルコベンダスの工場は、坂を下った窪地に建っているので、これまで洪水に2回も見舞われたことがあります。そうすると、家具の製造がストップしてしまいます。お客さまからの矢のような催促に「実は工場が洪水になりまして」と答えると、「その言い訳はこの前と同じでしょ」と言われ「いいえ、今度も本当にそうなのです」と四苦八苦したこともありました。
それから、今現在直撃している大不況です。売り上げは15%減になってしまいました。これからは、国外への進出も本気で考えなくてはならないと思っています。これまでにもヨーロッパ域内でいくつかのオファーを出してきました。
フランスのベビー用品の専門店とタイアップしてパリに出店するとか、イタリアのミラノも出店の候補地にあがっています。それから、メキシコの有名店が輸入したいと打診してきているので、これからが楽しみです。
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スペインは建築業界のバブルがドカンと弾けて、失業率はEU内でナンバーワン。せっかく建てたマンションも買い手がなく、半額に下がっても半分は空き家になっている始末。これまではマンション購入時に組むローンの中に、新しい家具の購入代も含まれていたのに、ローンを組む人たちが激減し、ましてや家具にまでは手が回らないという、家具業界の厳しい状況だ。
でもピラールさんは、17年間好調だったこれまでの経験を生かし、ヨーロッパや中南米への進出を次の目標に、たくましく生き抜くことだろう。
ウベ・テー・ウベ
オルテガ・イ・ガセット通り
34 28006 マドリード
電話
34 91 575 92 59
e-mail ortega.tienda@vtv.es
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