機関誌『専門店』ハイライト
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店 人 いま 8月号
お客さまのニーズに応え
仕入れ先との信頼を築き
老舗に甘んじることなく日々勉強
永井武彦氏 ㈱茶香・丸源(名古屋会) 聞き手 日専連組織部 宇田 弘
今回取材した名古屋会のお茶専門店「茶香・丸源」さんは、名古屋駅から地下鉄で3駅目の久屋大通駅に直結している、地下2階・地上12階建てのセントラルパーク・アネックスの一階に店を構える。このビルは、永井社長をはじめ七名のオーナーによる共同ビルで、立地は申し分ない。テナントは東急ハンズ、無印良品、フランフラン、銀座アスター...など、集客力のあるテナントが多く、大変賑わっている。
茶香・丸源さんは、お茶を販売するだけではなく、店内に併設された日本茶カフェで、選りすぐりのお茶がお菓子と一緒に楽しめる。老舗に甘んじることなく、進化を続ける茶香・丸源の永井社長にお話を伺った。
お茶の目利きは
経験によって培われる
●今、三代目だそうですね。初代からお茶の専門店だったのですか。
永井 そうです。代々お茶専門でやってきております。明治の中ごろに伊勢から名古屋に移ってきました。それからはずっと名古屋で商売をさせてもらっています。
もともと伊勢では卸しをやっていて、名古屋を中心に卸していたんですが、直接自分らで販売したほうが良いということで出てきたお茶の目利きは経験によって培われるようです。
●お茶は全国から仕入れているの
ですか。
永井 静岡が中心ですが、京都もあれば、いろいろです。
●主流は静岡ですか。
永井 煎茶は静岡がメインです。
●静岡のお茶が社長の目にかなったということですか。
永井 お茶は産地と作る方の腕によって全く違ってきます。長年かけて、生産者とともに茶づくりについて語り、良い関係を築いて今日に至っています。やはり、お互いの信頼関係ですね。
●仲買人から買い付けるのですか。
永井 市い ちがあって、そこで仕入れるときと、農協からのもの、一部は生産農家から直接というものもあります。
●取引はもう長いのですか。
永井 ええ、もう長いですね。信頼関係ですからね。一時良いものをいただいても、続かなくては何もなりませんから。私は向こうさんを信頼して、こちらも向こうさんから信頼してもらうことで、今の丸源があると思います。
●先代からずっと取引が続いているところもあるのですか。
永井 そういうところもありますが、やはり時代は変わりますからね。以前は農協なんてなかったですが、農協ができて組織もずいぶん変わってきましたね。
●信頼関係といってもお茶は生ものですから、良質なお茶を確保するのは難しいでしょうね。
永井 5月の新茶の時期に直接現地に出向いて、そこで良いものを選んで仕入れています。
●その選別は長い経験によって培われたものなんでしょうね。
永井 そればかりは今でも勉強ですね。気候条件は一定ではありませんから、毎年、毎年、違っています。去年おいしいものができたから、今年もおいしいものができるとは限りませんからね。いつまでも勉強しながらです。
●選別の秘訣などはありますか。
永井 数をたくさんあたることですね。匂いが一番の頼りで、良い成分が入っていると香りが良いんです。
●葉の匂いですか、それともお茶を淹れたときの香りですか。
永井 両方です。私らは葉の匂いと、試験場で一定の量の熱いお湯を入れて、それでまた匂いを嗅ぎます。匂いによって、どのランクのお茶かだいたい分かります。
●静岡のお茶の特徴はどういうものですか。
永井 一番は爽やかさがあって、コクがあります。煎茶の場合、京都と静岡では、お酒の甘口と辛口みたいな違いがあります。京都のお茶はどっちかというとこってりしています。なぜかと言うと、静岡はわりと早く4月の終わりころからできるんです。京都は5月に入ってからなので、気候の加減で質が違ってくるんでしょうね。どちらが好きかはお客さまの好みということになりますね。なかなかすべての人がおいしいと言うお茶はないです。10人のうち3、4人の方に喜んでもらえるという程度で考えないと、すべての人がおいしいと言うお茶を探し出すのは難しいですよ。
●温暖化の影響はありますか。
永井 今の温暖化は、味にもかかわってきますので、私たちにとっても、小さな問題ではありません。お茶の木は、何年もの年数をかけて育てていきます。暑いときは暑く、寒い時期はきちんと寒くなり、雨も降るべきときに降ってくれないと困りますね。
●前に東北のお茶屋さんのお話で、お茶の栽培ができるのは秋田までだと聞きましたが、温暖化の影響でだんだん北上してくるんじゃないですか。
永井 寒暖の温度差は、茶の香味を決める大事な要素です。温暖化がどのような影響を及ぼすかは、心配ですね。
喫茶部をオープンし
お茶とお菓子を提供
●ペットボトルのお茶の影響はあり
ますか。
永井 ペットボトルのお茶が出てきたときが、ちょうどこのビルを建てたころで、今から20年ぐらい前になります。ジュースなどはお金を払いましたが...。ところがペットボトルが出てきて、お茶はドリンクとしてお客さまからお金をもらえるようになりました。
そのころに、このお店をオープンする際、これからは葉っぱだけではなくて、淹れたお茶でもお金をいただいて、皆さんに飲んでいただけるのではということで、喫茶部を始めました。それまでお茶屋さんではあまりこういうことはやってなかったでしょう。そうしましたら若い人にも好評でね。夏は冷たいお茶も出します。皆さん、よく利用してくださいますよ。
1人の人間の水分摂取量は限られていますから、何かを飲めば、何かが減るわけです。だからペットボトルのお茶が出たときには、お茶屋はどうなるのかと心配しましたが、良いお茶は売り上げには影響しませんでした。
今後は、ペットボトルのお茶に馴染まれた若い方を、葉っぱで淹れるおいしいお茶にどう展開できるかですね。ペットボトルのお茶は高くておいしくありません。
●お茶を淹れて冷やして飲んだほうがおいしいのに、面倒くさいんでしょうかね。
永井 今うちでは淹れたお茶を、水筒やマグボトルなどに入れて、お持ち帰りできるようなこともやっています。水筒やマグボトルを持って来ていただければ、200円でおいしいお茶を詰めてさしあげるんです。
●それはいいですね。
永井 若い人はコーヒーなどを好まれて、なかなか日本茶には馴染まれてない方が多かったですが、最近はジュースよりもお茶が良いと言う方も多くなりましたね。
●ペットボトルの効用ですね。
永井 私どもは、生産者から荒茶で買うんです。葉っぱを蒸して、揉んで、乾燥させたままの状態を荒茶といって、それは粉も茎も入っているんですが、それをきれいに精選して販売するんです。
買った荒茶は産地や農協の冷蔵庫に預けておいて、順番に精選します。今は産地に工場がありまして、精選したものをこちらに送ってもらっています。抹茶はこのビルの一角で挽いています。
地下鉄から直結
立地は最高
●今、何店舗ぐらいあるんですか。
永井 ここと桜本町店の2店舗です。
●創業からは何年になるんでしょう。
永井 100年そこそこになるんでしょうね。
●老舗ですね。
永井 長くやっているだけで十分な成果は上がってないですが...。
●昔から本店はここにあったのですか。
永井 このビルの入り口のあたりにあったのですが、地下鉄ができるということで、私どもを含めた土地の地権者七社でセントラルパーク・アネックスという共同ビルを建てました。
●上は東急ハンズで、若い人も大勢来られるのでしょうね。
永井 ええ、若い人も結構来店されます。ほかにも無印良品も入っていますし、下にはフランフランもあります。一二階ありまして、一番上は銀座アスターです。
●立地が良いのでしょうね。この不景気なときにうらやましい限りです。
永井 そんなこともないですが、良いお店が入ってますね。
●従業員は何名ですか。
永井 家族も入れて全部で一一人です。
●お得意さまも大勢いらっしゃると思いますが、長いお付き合いなんでしょうね。
永井 昔からのお客さまもいますが、新しいお客さんをどんどんつくっていかないとね。
●だからこういう喫茶部や、冷たいお茶をマグボトルに詰めたり、お茶のアイスクリームを提供するなど、いろんなことを仕掛られているのですね。
4代目さんは?
永井 息子を東京のお茶屋に3年ほど修行に出しまして、今はここで働いています。短期間ですから十分とは言えませんが、他人さまの飯を食べてくると少しはね...。至らないところばかりでなかなか・・・(笑)。
●お茶のおいしい淹れ方は?
永井 お茶によって淹れ方が少しずつ違うんです。よく出るお茶もあれば、ゆっくり淹れないとなかなか出ないお茶もあります。私どものお茶はこういうふうに淹れてくださいと、買ってくださった方に親切に説明するようにしています。
お茶のいろいろ
嗜好の多様化
●珍しいお茶ってありますか。
永井 特別には...。巷でちょっと話題になっているのは、花粉症の症状を抑えられるといわれるお茶ですね。
●お茶って体に良さそうですからね。
永井 普通の緑茶には含まれていない成分で、ある一部の品種だけに含まれている成分がありまして、それが花粉症に効くそうなんです。その品種は「紅冨貴」というんですが、製品名は平仮名で「べにふうき」と表記しています。薬事法云々がありまして、効き目のあるなしは言えないんですが、だいたい飲んで三〇分ぐらいで症状が消えるそうです。
お茶のいろいろ
嗜好の多様化
●おいしく飲んで、効果があるなら一石二鳥ですよね。
永井 そうなんです。お茶を飲んで症状が和らぐと評判になっています。薬だと副作用がありますが、それもありません。
変わったお茶といってもお茶ですからね。用途ごとに使い方を考え出して、お客さまに新しい情報として伝えていきたいと思っています。
私どもがねらっているのは、もっと簡単に出せるお茶ですね。急須を使ったり、茶殻の後始末も面倒がられますので、ティーバッグや粉末なども考えられていますが、まだおいしさが伴わないですね。普通に淹れたお茶と同じような味と香りで、手間がかからないということが課題でしょうね。
●急須で淹れるから良さもあるのですがね。
永井 それが本当のお茶の文化で、残していかなければいけないんです。
●この店で一番の売れ筋はどういうお茶ですか。
永井 お煎茶の「はつめ」ですね。これは、八十八夜前後に摘んだものです。真空パックになっています。お茶は「高温・多湿」「酸素」「光」を嫌います。保管は冷暗所か冷蔵庫に入れていただくとよいでしょう。冷凍庫だと外気との温度差がありますので、開封したときに湿気を吸ってしまいすので、室温と同じになるまで置いてから開封してください。
●一押しのお茶は?
永井 うちで扱っているお茶は全部で40種類ぐらいありますが、そのなかで5.6種類は私どもで特別にネーミングして販売しています。
「プレミアム新茶」は、八十八夜に向けて予約を承っていて、5月5日にお届けします。収穫するのは1日だけですから、生産者と契約して、予約した量だけしか作りません。ご案内を出しますと、今年も...と皆さん予約してくださいます。
これは「いりたて」というほうじ茶です。香ばしくて、お食事のときに飲んでいただくのに一番です。それぞれ用途に合わせて飲んでいただきたいと思います。
お茶は嗜好品ですから、人によって煎茶が好きだったり、玄米茶が好きだったりという方もいらっしゃいます。この「いりたて」は100グラム420円のお茶です。
●お水も影響してきますか。
永井 名古屋の場合、木曽川のおかげでわりと水がいいんです。今お出ししているお茶も、水道の水をそのまま使っています。
おいしいお茶を淹れるには、まずよく沸騰させてください。沸騰させることでカルキ臭や水のクセを取り除くことができます。同じお茶でも、水によって味が微妙に違いますね。
●最後にこれからの展望をお聞かせください。
永井 ほとんど息子に任せていますが、仕入れはまだまだですから私が...。
特別な展望というより、お茶は地道にコツコツとやっていくのが一番です。お客さんの信頼を失わないように、おいしいお茶を売ることがまず第一です。
いろいろと時代も変わっていきますから、それに合わせて商品の開発もしていくということが基本だと思います。できるだけお客さまにご不便をかけないように、お店もできる範囲で増やしていきたいとも思っていますが...。
●今日はお忙しいところありがとうございました。
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