機関誌『専門店』ハイライト
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ホットプレイス訪問 5月号
商売はやり方次第
苦戦のホームセンター事業を見切り
産直で賑わう「わくわく広場」で大成功
さすらいの繁盛商売伝道師
高桑 隆
各地で繁盛している農産物直売所を
新たなビジネスモデルと考え
企業参入が始まった
当連載でも何度か取り上げてきたが、地方では今、農産物直売所が大きな集客力を発揮している。その背景にあるのは、毒餃子事件や汚染米事件を取り上げるまでもなく、消費者の食品に対する「安全・安心」に対する欲求である。「地産地消」をうたい文句にした道の駅の売店、農協に併設された店、あるいは掘っ建て小屋のような農産物直売所までもが、新鮮野菜を求める奥さまたちで大繁盛している。各地の直売所を調べてみると、一カ所で年間5億円も10億円も売る直売所はザラである。
特に、首都圏や中部圏や九州などでは、年間20億円以上も売る、お化け直売所も珍しくない。この巨大な野菜マーケットがもたらすものは、農業経営の活性化である。従来の農家では、現金収入が年に一度の米収入しかなかった。しかし、近年はこうした直売所に出荷し、年間1000万円を超える豊かな農家も出現している。
ところが、町場の商店街の人々は〝あ~ぁ、あれは田舎のこと。私たちには関係ない!〟と無関心を装う。ところが、ホームセンターを経営している流通企業が、農産物直売所の繁盛ぶりを知り、それを調査・分析して、自分たちで民間の農産物直売所をチェーン展開し始めたのである。
その会社は、千葉県木更津市に本部のある、株式会社タカヨシ。ホームページで調べると、既にホームセンターから「わくわく広場」という直売所に転換した店が40店舗ある。
〝面白い、取材してみよう!〟と決意し、先輩の生井先生(元ドン・キホーテのコンサルタント)に紹介いただき、(株)タカヨシの高品専務と茨城県阿見町の「わくわく広場」荒川沖店で会うことになった。
高品謙一 専務
競合が激しいホームセンターから
野菜の産直「わくわく広場」という直売所へ転換
当日、茨城県阿見町の荒川沖店は新規オープン。写真でお分かりのように、店内はお客さんでテンヤワンヤの大繁盛。そんな中、高品専務(35歳)にお話を伺った。
「うちはもともと、ホームセンターや書店をチェーン展開してきた中堅の流通業です。1990年代に入って大店法が撤廃され、店舗の大型化が進むと、うちのような500坪程度のホームセンターは、1000坪~2000坪の大型のホームセンターに負けてしまいます。
そこで、現社長である父が、10年前に和歌山県の『めっけもん広場』という直売所をTVで知り、〝こりゃ面白い! うちもやってみよう〟ということで始めたのが『わくわく広場』なのです。農産物直売所というのは、基本的に『委託販売方式=場所貸し商売』です。ですから、出荷する生産者に在庫・引き取り責任があり、我々は在庫負担もなく、手数料(野菜20%、パン・惣菜22%、花23%)だけをいただける気楽な商売だと思って参入しました。
でもそれは大間違いでした。いゃ~ずいぶん苦労しましたヨ・・・」
10年前に始めた「わくわく広場」だったが、運営ノウハウを確立するまでには大変な苦労があったようだ。
「農産物というのは、地域で生産される時期が同じで、出荷する農家も皆同じものを作っています。キュウリならキュウリ、キャベツならキャベツ、大根なら大根と、店中がそれ一色になってしまうのです。当初、これに頭を悩ませました。解決策として、出荷をお願いする生産者開拓活動で、農家のほかに、商店街のお肉屋さん、お惣菜屋さん、お菓子屋さん、パン屋さんなどの食料品店にも声をかけ、出荷をお願いに回りました。結構皆さん、快くご承知いただきまして、それで現在のようにバラエティー豊かに揃えることができました。
また、欠品という問題もありました。私共は、〝欠品は『悪ダ!』〟とずっと教えられてきました。しかし、直売所では新鮮な野菜は早い時で、午後3時ころに売り切れてしまいます。〝売り切れるほど、お客さんがわざわざ遠くから買物に来てくださる!〟と割り切りました。今では、この商売に欠品はつきものなのだと思っています」と高品専務。
午前10 時半でこの人出。ショッピングセンターの一角にあり、
店頭のイベント風景
ここだけが大繁盛していた。もちろん駐車場もほぼ満杯
コントロールできない生産者
生産者を集められないとこのビジネスで成功はしない
「意外に難しいのが生産者のコントロールです。『わくわく広場』が売れていると生産者は集まりますが、売れなくなると途端に出荷しなくなります。
〝あの店は売れる、あの店は売れない・・・〟と生産者間で噂しているようですね。農家は朝が早い。私どもの店は、7時半にパートさんが店の鍵を開けます。すると、もう生産者の方が数人、出荷しに来られている。ところが、後から来た生産者が、隣のホウレンソウの値段と売れ具合を見て、自分のホウレンソウを安く値付けしていくのです。値付けは自由にしておりますから、店内でちょっとした価格競争が起こり、それがまたお客さんの人気を煽ります。
ところが、安いから売れるというものでもありません。野菜作りに熱心な生産者は、やはりそれなりに人気があります。お客さんもよく見ているのですね。野菜を出荷して、午後再度、売れた分を補充するなんていう、熱心な生産者は収入が目に見えて増えますね。
定の生産者に、根強いファンが生まれます。〝あの手作りこんにゃくのおばあさん、今日は出してない・・・?〟などという声が、いたるところで聞かれますからね。また、いろんなアイデア商品も生まれました。
さまざまな農村特有の利害関係で、出荷妨害もありました。いつも苦労は絶えませんね。でも、いろんな人々との出会いがある「わくわく広場」、顔の見える生産者と、買い物客の出会い、我々はそれを仲介する商売ですから、結構やりがいを感じますね。
毎日出荷していただいている生産者の皆さんは、帰りに買い物してくれますから、彼らは生産者と同時にお客さまでもあるのです。ありがたいですね・・・。
一店舗あたり300名(全店で12000名が登録)の登録があります。今まで、小規模のホームセンターやスーパーの撤退物件に出店しましたが、この商売は、結構小商圏でも成り立つんですよ。出店場所は無限にありますね・・・」
新しいビジネスモデルは
モデリング(模倣)から生み出される
ところで、ホームセンター「タカヨシ」の業態転換「わくわく広場」は、マーケティング論からいえば「モデリング(模倣)」という技術である。
新しいビジネスモデルを開発する場合、先行している「先進モデル」を探し、それをモデル(理想形)と位置づけ、実際に見学・研究・模倣し、試行錯誤しながら新たに改良を加え、新しいビジネスモデルとして確立することを指す。
〝何だ!─サル真似か?〟と思う向きがあるかもしれないが、それは間違いである。
そもそも我々の歴史そのものが、モデリングの連続であった。
「漢字」は、古来中国の漢の国から伝わった。それを忠実に習い取得しながら、長い年月をかけて徐々に改良を加え、今や「漢字」「ひらがな」「カタカナ」などに発展させ、世界にもまれな高度な漢字体系をつくり出した(しかし最近、これを悪用し、私腹を肥やす公益法人が問題となっている)。
我々の歴史はモデリングそのものだ。身近にある「コンビニエンスストア」も、米国のコンビニのモデリングの結果であり、今や米国のコンビニよりも数段完成されたビジネスモデルとなっている。
「スーパーマーケット」も「ショッピングセンター」も、「ドラックストア」も、「車」や「冷蔵庫」、ありとあらゆる物品から、議会制度や社会システムまで、我々はモデリングを続けてきた。
今回取り上げた「わくわく広場」も同じだ。
戦後、わが国の地方は農業の近代化の遅れで徐々に衰退した。しかし、歴史の皮肉なのか、現在農村部の一部が農産物直売ブームで大いに沸いている。そして、直売所をモデリングした「わくわく広場」という新ビジネスモデルが誕生し、農協や地方農政は、主役の椅子を奪われそうになっている。時代は変化し、新しい担い手が芽吹く。
迫力満点の大根の葉っぱ
生産者の顔が見える
10時半でレジは大行列
いち早く発見し育て上げた者こそが次代の勝者となる
取材日、茨城県阿見町の「わくわく広場」荒川沖店は、店頭までお客さんがあふれ、開店景気でごった返していた。そんな中、ふと思ったことがある。
時代は変化し、その変化の中から新しい時代の担い手が芽吹いている。それをいち早く発見し、大切に育て上げた者こそが、次代の真の勝者となるのだと・・・。
印象に残った専務の言葉がある。
「私たち物販業は、『在庫』に悩まされ続けてきました。でもこの商売を始めてから、在庫の心配は全くなくなり、何よりキャッシュフローが抜群に良くなりました。この商売を始めて、本当に良かったと思っています」
首都圏郊外で起業し、ガソリンスタンドからホームセンターへ、そして全国展開の中で競合に敗れ、試行錯誤の結果、今新たに成長するビジネスモデルを発見し、飛躍の時をうかがっている。
いつの時代も、商売はやり方次第だ。あきらめずに頑張り、試行錯誤の中で新たなビジネスの芽を発見し、明日を見つめる若き起業家、高品謙一専務35歳に、熱いエールを贈る。
懐かしい駄菓子コーナー
「タカヨシ」概要
商号 株式会社タカヨシ売上高115億円
本社所在地 千葉市緑区古市場461
資本金 2億2350万円
代表者代表取締役 高品政明
従業員数852名(パート、アルバイト含む)
事業内容
産物直売スーパー「農家の八百屋さんわくわく広場」の経営とフランチャイズ展開、わくわく広場を導入した日用品・家庭用品を取り扱うバラエティーストア「ファミリーセンター」の経営。リーズナブルな料金のカラオケボックス「歌若丸」「うた丸」の経営。「省資源」をテーマにしたリサイクルショップ「トレゾル」「キッズデポ」、セルDVDの「DVDマーケット」の経営
沿革
1970年(昭和45年) 千葉県木更津市において、有限会社高芳商事設立(資本金100万円)。事務機器販売を始める。
1979年(昭和54年) 株式会社タカヨシに社名変更(資本金2000万円)。ホームセンターの出店を開始、千葉県館山市に開店。
2000年(平成12年) 株式会社タカヨシエンタープライズを吸収合併。ファミリーセンター内にて、農産物直売場「農家の八百屋さん」を開設。
2001年(平成13年) 農産物直売所へ本格的参入し、わくわく広場1号店開店。
2008年3月末現在 首都圏を中心にグループ総合80店舗(わくわく広場は40店舗)を展開中。
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